短編小説
□幸せの世界
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ルルーシュがスザクにかけたギアス『生きろ!』が発動され、撃たないと決めていた新兵器“フレイヤ”は放たれた。
政庁を中心にトウキョウ祖界を呑み込んだ、黒い悪魔は祖界と何千人ものの人を呑み込み消滅した。
その光景にシュナイゼルはほくそ笑み、その他の者達は唖然とその光景を眺めている。
呑み込まれた政庁には、実妹ナナリーがいたはず。
ロロが間に合っていれば、ナナリーもどこかで生き延びているはずだ。
ゼロ専用機体“蜃気楼”の中で、高鳴る心臓を必死に抑えながら通信が復活するのを待つ。
ノイズ混じりの通信が蜃気楼に入る。
映像はまだ復活していないが、音声のみだけの通信。
通信相手は、ブリタニアのグラスコーを奪ったロロだ。
「ロロ。ナナリーはどうした?」
両目を片手で抑え、目前に広がる光景を直視したくはない。
もしかしたら。
という考えが頭を過るも、首を振って否定する。
認めたくはない。
認めてしまえば、大切な妹を失った事になってしまう。
「ロロ。ナナリーは?」
再度聞けば、漸くロロが口を開いた。
『・・・兄さん。咲世子は助けられなかった。ごめんなさい』
そんな事を聞きたい訳ではない。
確かに咲世子はルルーシュの正体を知っても、付いて来てくれた人だ。
彼女を失った事で、悲しい気持ちもある。
だが、それとこれとは別である。
「ナナリーは?」
三度目の問い掛けは、別の者が答えた。
『お姉様。私は無事です。ロロさんに助けて頂きました』
普段のルルーシュは男装している。
女だと色々と面倒な事が多い為だ。
だからルルーシュを姉と呼ぶのは、たった一人しかいない。ルルーシュの性別を知るロロにも、“兄さん”と呼ばせている。
血の分けた異母兄弟姉妹でさえ、ルルーシュは性別を偽っていた。スザクも知らない事実だろう。
「ロロ、よくやった。怪我はないか?ナナリー」
『ロロさんが庇って下さいましたので大丈夫です』
止めていた息を吐き出し、ルルーシュの目的の一つは達成された。
だが、このままで終わるとは思えない。
「ロロ。今から言う場所で暫く待機していろ。ナナリーはロロの言う事をきちんと聞くんだよ」
『『はい』』
通信を切り仮面を被る。
蜃気楼を母艦“斑鳩”に進行を向け、自分の信頼する部下にこれから起こりうるであろう予測を伝えた。
ブリタニアと黒の騎士団の停戦とエリア11の英雄“ゼロ”の死亡が同時に発表された。
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