リク&拍手
□眠り姫にキスを
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幼い子供にとって、皇帝宮は好奇心を刺激される格好の場所だ。
『関係者以外立ち入り禁止』と書かれている場所ほど、入ってみたくなるのが子供心だ。
己の好奇心に我慢出来るはずもない。
名門貴族ヴァインベルグ家四男ジノも、普通の庶民の子供と同じなのだ。
己の好奇心に勝てるはずもなく、父に連れられ訪れた皇帝宮で「ここで大人しく待つように」父から注意されるも、暫くは大人しく待っていたジノも時間がたつに連れ、何も無い広い部屋は暇で仕方がなかった。
警備兵に見咎められないよう、こっそりと部屋を抜け出したジノは、人の気配がしない茂みを選びながら皇帝宮の奥へ足を運ぶ。
上の兄達と比べられる事が多かったジノは、勉学や帝王学よりも武術やKMFの操縦術に力を入れた。
自分の気配を消す事も朝飯前なほど簡単にやっとのけた。
一般常識さえ認識出来ていればそれで良し!
ブリタニアは力こそ全てだ!
ならば自分は力だけで上に行ってみせる!!
13歳ながら、ジノの夢は皇帝の騎士。
ナイトオブラウンズ、しかも上位No.に入る事だ。
ラウンズになって、兄達と自分を比べる両親と親戚連中を見返してやる!
人気が無いのを良い事に派手にガッツポーズを決め、長い廊下をスキップしながら進む。
いつかはこの廊下を胸を張って歩きたいものだ。
好奇心の赴くまま、広大か敷地内を散策する。
奥に進むにつれ、華美だった建物から一変、人工的に造られた森の中に入った。
人工的に造られた自然でも、鳥のさえずりや木々から差し込む陽光、花の香りを運ぶ柔らかな風が吹き抜ける。
ヴァインベルグ家所有のものとは違う趣があった。
優しい景色にジノは目を閉じ、草木の香りを胸いっぱいに吸い込む。
<殺伐とした場所に、こんな癒しの空間があるとは>
皇帝宮や政庁は腹の探りあいばかりだ。
人の足を引っ張り、己の昇進と地位にしか興味がない世界。
皇帝陛下の多数いる妃も、寵愛を受けるため他の妃を貶める、そんな世界にこんな空間が必要になるのだろうか?
蹴落とし、蹴落とされの場所だからこそ、必要なんだろう。
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