ただ君を想う
□第1話
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俺は、ゆるゆるのダメージジーンズを腰まで下げて、生々しいドクロがプリントされたTシャツという出で立ちで病院に来ている。
俗にいう不良という奴で、16になったばかりの高校生なのにタバコを吸い、お酒も飲んでいる。
連んでいる奴らもそんな感じの連中だ。
俺は、夏蜜柑が3つ入ったビニール袋を右手にぶら下げ、ある部屋を目指した。
不良なんてしていても、育ちはいいから礼儀はキチンとわきまえる。
コンコン
プラスチックで出来た扉をノックすると、中から声が聞こえた。
「はーい、入って〜」
この高めで、伸びやかな声はどんな時でも、俺を安心させる。
ガラッ
扉を横にスライドさせ、開けると、白に統一された部屋が見える。
そして、その片隅に置かれたベッドの上に水色のパジャマを着た女性が上半身だけ起こして座っていた。
「よ!早苗(サナエ)、今日も来たぞ♪」
「クスクス、そうだね〜“素直な人”と書いて、直人(ナオト)クン!」
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