一日千秋
□困惑
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えっと……
宮ノ下は、春樹の実家。
“コンノ ショウ”は父と母を裏切った張本人。
この2つが関係してる?
嘘だよね?
聞き違いだよね。きっと。
だって、あんなに優しかった春樹のご両親がそんなことするはずないよ。
そう。これは何かの聞き間違え。
「……小夜?」
「ん?なに?猛くん」
「……なんで笑ってるんだ?」
「?」
「……しっかりしろよ。小夜。悪い癖を出すな。“現実に目を向けろ”」
「やだなぁー。ちゃんと目を向けてるよ。猛くんなんか怖いよ?そろそろ出よっか」
急に目の鋭くなった猛くんになぜか私は焦りながらその場を立とうとすると、手首をつかまれた。
「猛くん?」
「頼むから“現実に目向けてくれよ”」
“現実に目を向けてくれよ”
確かずっと昔にもそう言われたことがあった。
これと同じ強いまなざしで……
あぁ、そうだ。
あれは、親戚に預けられて数日経ってお父さんとお母さんが死んだと知ったときだ。
あの時も、私は今のように自分で自分に言い聞かせてた。
“これは嘘だって”
忘れようとした。
そんな私に現実に目を向けさせ、支えてくれたのは猛くんだった。
そして、今もまた私は前と同じように忘れようとした。
忘れて前に進めるわけ無いのに………
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