ただ君を想う

□第1話
2ページ/20ページ




「うるせー!それを言うなよー」


そう、不良の俺の名前は直人。なんとも、誠実そうな名前で嫌いだ。


そのため、仲間達にも名前は教えていない。


もっとカッコ良くて、強そうな名前が良かったなぁと今でも本気で思っている。


そんなに呼ばれるのが嫌な名前を、早苗に教えられたのはなぜだろう?


早苗とは、この病院に入院している患者で、今、話している相手。


年は教えてくれなかったけれど、話の内容や見た目からして20歳ぐらいだろう。


早苗は、生まれたときから心臓が弱く、入退院を繰り返していたらしい。


今では、もう入院生活が当たり前になってしまったらしいけど…


病院に長く入院しているとは思えない程、早苗は明るくて、面白かった。


俺は早苗といる時だけ、本当の自分でいられるように感じた。いや、本当の自分でいられたんだ。


「でも、いい名前じゃない?直人って。」


ほら、早苗が“直人”って呼んでも苛立たないで素直に受け入れている自分がいる。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ