星の行く末、深淵の原

□契約の証
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 誰も気付かない。


【3、契約の証】



 二人を包むのは闇。
 首筋から流れる赤が筋を描いてシャツを汚す。
 「どうして」と問い掛ける瞳は、すぐに痛みによって閉じられた。
 どうしても何も無い。初めからこのつもりで誘っていた。
 やがて彼女は意識を手放す。

 ――人間は餌だ。

 頭の奥から囁く声がする。血を啜れ、力をつけろと。長く拒めば拒むほど強く、飲めばいくらか慰められる。
 生き血が無ければ生きられない身体。
 温もりを求めても叶わず、ただ徒(イタズラ)に永い時を過ごす――。







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