星の行く末、深淵の原
□契約の証
1ページ/7ページ
誰も気付かない。
【3、契約の証】
二人を包むのは闇。
首筋から流れる赤が筋を描いてシャツを汚す。
「どうして」と問い掛ける瞳は、すぐに痛みによって閉じられた。
どうしても何も無い。初めからこのつもりで誘っていた。
やがて彼女は意識を手放す。
――人間は餌だ。
頭の奥から囁く声がする。血を啜れ、力をつけろと。長く拒めば拒むほど強く、飲めばいくらか慰められる。
生き血が無ければ生きられない身体。
温もりを求めても叶わず、ただ徒(イタズラ)に永い時を過ごす――。
.