久留山家謹製音声通信機能付縫いぐるみ型監視カメラの記録
□とある宝石についての顛末
1ページ/5ページ
何を届ける?
『運び屋・大和』
太陽がビルの谷間に沈む。
町に明かりがつく頃、運び屋・大和は配達リストを確認した。今日の配達は粗方片付いた。リストの欄外に書き込まれた時間ゆを確認して、バイクに跨がる。本日最後の仕事は繁華街の角。
待ち合わせ場所に着いた。依頼人の姿は見当たらないが、監視屋を見つけた。
「監視屋なんて付けなくても届けるのに」
「ははっ信用されてないね」
「うるさい」
青髪の監視屋は、へらりと笑って大和の頭を撫でると姿を消した。ちまちま隠れながらついてくるつもりのようだ。
待ち合わせの時間は過ぎたが、依頼人の姿はまだ見えない。
「……遅い」
ふと視線を上げると、監視屋が立っていた。何か言いたげに大和を見ている。
「早く言えば?」
残念なお知らせだけど――そう前置きしてから告げられたのは、依頼人が来られない理由。
「……消されたか」
きっと荷物は奪われた。依頼人が居なくなったのにわざわざ探し出し、奪い返して届ける必要もない。
大和はバイクに跨がると、帰る、とだけ言って待ち合わせ場所を後にした。
→
次へ
[
戻る
]
[
TOPへ
]
[
しおり
]
カスタマイズ
©フォレストページ