久留山家謹製音声通信機能付縫いぐるみ型監視カメラの記録

□とある宝石についての顛末
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 何を届ける? 

  『運び屋・大和』

 太陽がビルの谷間に沈む。
 町に明かりがつく頃、運び屋・大和は配達リストを確認した。今日の配達は粗方片付いた。リストの欄外に書き込まれた時間ゆを確認して、バイクに跨がる。本日最後の仕事は繁華街の角。

 待ち合わせ場所に着いた。依頼人の姿は見当たらないが、監視屋を見つけた。
「監視屋なんて付けなくても届けるのに」
「ははっ信用されてないね」
「うるさい」
 青髪の監視屋は、へらりと笑って大和の頭を撫でると姿を消した。ちまちま隠れながらついてくるつもりのようだ。
 待ち合わせの時間は過ぎたが、依頼人の姿はまだ見えない。
「……遅い」
 ふと視線を上げると、監視屋が立っていた。何か言いたげに大和を見ている。
「早く言えば?」
 残念なお知らせだけど――そう前置きしてから告げられたのは、依頼人が来られない理由。
「……消されたか」
 きっと荷物は奪われた。依頼人が居なくなったのにわざわざ探し出し、奪い返して届ける必要もない。
 大和はバイクに跨がると、帰る、とだけ言って待ち合わせ場所を後にした。
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