久留山家謹製音声通信機能付縫いぐるみ型監視カメラの記録

□擬似家族写真
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 時告げ鐘が二度鳴った。
 依頼状の束を整理していたテオが顔を上げる。
「そろそろかな」
 屋外の、近付いてくるトラックのエンジン音。危機馴染みのある低音に、眠るように動かなかった夙も顔を上げて入り口の方を見た。
 勢いよく扉が開いて、入ってきたのは威勢の良い女性。
「よーっすテオ! ジャンナさんが届けに来たよー!」
 テオに挨拶してすぐに夙の存在にも気付いた。
「夙もいたのか!」
「……どうも」
「ジャンナさん、荷物を」
「お、そうだった。ここに受け取りのサインな」
 テオとジャンナのやりとりを見ながら、「良い相棒」という言葉が浮かんだ。もうひとつの意識下では、以前テオがこぼしていたことも思い出す。
「……はぁ。大人の世界はよく分かんない……」
「突然何なんですか」
「何でもない」
 テオと夙のやり取りの合間に、室内を見回していたジャンナがテーブルの上に置かれたカメラを見つけた。
「フィルムカメラだ……しかも相当年季の入った。テオのか?」
「二度目になりますが、違います」
「動くのか?」
「一応、先程試し撮りしたところですよ。ちゃんと写っているかは現像してみないことには分かりませんが」
「ふーん」
 ジャンナはカメラを手に取りしばらく眺めた後、レンズを二人の方へ向けた。フレームの中に映る、自然体のテオと何故か固くなる夙。
 覗いただけでシャッターボタンは押さない。代わりにこんな提案をしてみた。
「よっし、三人で撮ろう!」
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