増血鬼〜裏切りの王子〜
□第一夜:特殊体質の少年
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暗い、何も見えない。
血のように真っ赤な渦が俺を包もうとする。
俺はただ、渦に落ちる時を待ちながら地上から闇に落ちる。
『正樹!!』
ふと、俺を掴む手……。
その手に力が入る、痛い程に……。
だけど、俺を闇に落とさせないと言う気持ちは分かった。
後一歩で落ちそうな闇。
俺は一生懸命に掴まれた腕を掴み俺を助けた人物にしがみついた。
この感覚はなんだろう、暖かい感情。
俺は、感謝と共に助けた人物に接吻した。
―――――――――――
「本当に、やっちゃうのか?二階堂」
「……はい」
此処は、俺…二階堂正樹が通う私立英気(エイキ)高等学校の理科室。
そして俺は、先輩の三人にあるモノを見せていた。
そして、俺はあるモノを見せる為に家庭科室から取ってきた包丁を自分の手首に宛がった。
プシュッと言う小さな音と共に、俺の手首から血液が流れた。
「ぎゃあぁぁぁぁ――――――――!!!!?????」
「二階堂グロい、グロテスクだ!!!!」
「血っ、血がこんなにうわぁぁぁ!!!!!」
毎回同じ反応に少々イライラした俺は、包丁を理科室の机に刺した。
「うるせーんだよテメーら、何回やってると思ってんだ!慣れろ!!」
「慣れの問題じゃないっすよ〜」
半泣きの先輩達は床に座り込みながら目を反らす。
俺は、そんな先輩達を無視して理科室を出て保健室に向かった。
俺の身体は、特殊体質らしい。
血が人の何倍もある、そんな体質だった。