増血鬼〜裏切りの王子〜

□第二夜:ヴァンパイア
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嫌な音が聞こえる。

耳を塞ぎたくても力が入らない。

俺の目の前は真っ赤に染まってる。

俺の………血。

俺の肌を舐めている男。

コイツは、誰だ?

何故俺の名前を知ってた?

何故俺の血を舐める?

何故俺は……死なない?

「うっあぁぁ……」

「美味しいよ、正樹」

悲鳴にも似た枯れた声。

男は、純潔と言う俺の肌を……赤に汚した。

男の舌が俺の身体を舐める。

先程身体から引き抜かれた長剣があった場所を……。

ピリピリ痛みがする。

この男は血が好きなのか?

それとも単なる気まぐれか?

この男は吸血鬼か?

それとも単なる危ない奴か……。

俺には考える思考が残されて居なかった。

「夢みたいだよ、正樹の身体を独り占め出来るなんて…」

腹部をなぞるように舐めていた青年は、俺の胸元に唇を近付けた。

「う、あぁぁぁ」

「…ハァ、正樹」

青年は、興奮気味で俺の胸元を愛撫する。

両手は麻痺して動かない。
俺はされるがままだった。

愛撫しながら、腹部の傷をえぐるように親指を押し当てられた。

「……いっった」

腹部に激痛が走り、目から涙が溢れた。

痛さと絶望の涙が……。

そんな涙を見て、青年は笑った。

何が可笑しいのか、分からない。
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