増血鬼〜裏切りの王子〜

□第四夜:親友と呼べる絆
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俺には弟が居たんだ。

俺と2歳下の弟が……。

だけど、弟は学校の帰り車に跳ねられた。

轢き逃げだったらしく、弟は即死だったらしい。

しかし、弟の遺骨はない。

……弟の死体は何処にも無かった。

形だけの葬式が始まった。

まだ中学生になりたてだった俺には刺激が強すぎて、葬式を抜け出した。

そして、やってきたんだ……あの公園に…。

葬式近くの公園だからか、人は数える程しか居なくて寂しい感じがした。

俺は、ブランコに乗って力無く揺らした。

家族の中で一番仲良かった弟が死んで、俺は何を楽しみに生きてけば良いんだ?

そんな時、揺らしてたブランコが止まった。

「……何しょんぼりしてんだよ二階堂正樹」

フルネームを言われて、伏せていた顔を上げる。

そして、太陽のように俺に微笑みかけていた奴が居た。

………それが瑠夏だった。

中学生に入学して、同じクラスだったから曖昧だが覚えてる。
だけど、俺と瑠夏が初めて話したのはこれが最初だった。

瑠夏は、クラスのムードメーカーで俺とは正反対だった。

クラスで、人見知りで引っ込み思案な俺とは釣り合わないと思ってた程だ。

だけど、そんな瑠夏が俺に話しかけてきた。

「……おいおい、何で泣く訳!?」

「…っ何でもない!」

服の袖で涙を拭く。

そんな俺に瑠夏はどう思ったのか……。

「……大丈夫だよ、お前には俺が居るだろ?」

…と、言って子供を慰めるように俺の背中を叩いた。

初対面なのに、その時……ずっと瑠夏が居てくれたと感じ、また泣きそうになった。

「……っなんでお前、に……そんな事言われなきゃなんねーんだよ!!」

反抗すると、面白いと思ったのかニコッと瑠夏が笑った。

「お前さ、さっき葬式会場から出てきたの見てさ、ああ誰か大切な人が死んだのかな?って思ってさ」

その時、俺は感じた。

瑠夏はなんでもお見通しなんだと…。

俺は、素直に凄いと思った。
「ほら、俺が居んだから笑えよ!!」

瑠夏に頬を引っ張られて無理矢理笑わす。

そんな瑠夏に顔面パンチをした。

涙目で訴える瑠夏に自然と笑みが出る。

「お前の言ってる事、いちいち訳わかんねーっての!」

「……あ、ひっでーの」

瑠夏は、口ではそう言うが顔は笑ってた。

そして、その時思った……俺には瑠夏が居るから大丈夫だ…って。

―――――――――――

「……瑠夏は、あの時から俺を憎んでたの?」

「……違っ…」

瑠夏は否定をすると、黙った。

そして、一言ずつ大切に言葉を発した。

「……俺は、ずっと正樹と言う奴を探してた父さんを狂わせた正樹を……」

それは、俺じゃない違う正樹の事を言うように発してた。

「正直、中学に入学した時…お前があの正樹だって決めつけてた」

「……そうだろうな」

正樹なんて名前、そんなに居ない。

「…公園でお前に声を掛けたのも殺す為で……」

言い難そうに瑠夏は言う。
俺は、胸が痛んだ。

「だけど、お前はとても悲しそうで…」

昔を思い出すように、瑠夏は顔を伏せて言う。

「瑠夏…」

「俺は、俺の知ってる正樹じゃないって自分に言い聞かせてた!!それを望んでた」

瑠夏の声は、路地裏に響く。

声を荒げた瑠夏は、涙を流した。

俺……泣いてる瑠夏を見たの、初めてだ。

いつも笑ってるから瑠夏も……。

「…瑠夏、瑠夏」

「………正樹」

泣くな、と言う意味を込めて…俺は瑠夏の頬に両手を添えた。

ネクタイで縛られてるけど、それしか出来ないから……。

「…正樹、俺は…」

瑠夏の顔が迫ってきた。

俺は、抵抗はしない。

瑠夏が大事な……俺の親友だから…。

しかし、一瞬で瑠夏の動きが止まった。
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