増血鬼〜裏切りの王子〜

□第五夜:増血鬼
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小川が綺麗な林を歩く一人の少年。

そして、その少年は誰かが倒れてるのを発見した。

そして駆け出す。

「あれあれ?これはこれは魔邪の森のヴァンパイアくんじゃないか、こんな事でくたばったの?」

少年は、無邪気な笑みを見せて少年……瑠夏の前髪を掴み自分の視線に合わす。

「くたばってるけど、まだ使えるね」

「……クスッそうですね」

少年の横に立つ長身の男は、笑いを含みながら少年の肩に手を置く。

「…それじゃあ、そろそろ」

「ん…そうだな、魔邪の森のルカよ…俺達に協力してくれよ?」

そして、血が吹き出る傷口に赤い飴玉を食い込ませた。

「さぁ、目覚めよ…ヴァンパイアルカ」

瑠夏は、うっすらと目を開けた。

その瞳は、深紅なっていた。

少年と長身の男は、嫌な笑みを見せた。

「成功だ、コウ」

「ツカサ様の初実験にハラハラしていたのですが、これで一段落ですね」

そんな二人、林の中に消えてった。
そして、その場に残された瑠夏は……。

「正樹……」

と呟きながら、走ってった。

―――――――――――

「……んっ、リュカ…」

「美味しい?正樹」

「美味しい、もっとちょうだい」

「あのさぁ、そんな会話だけだったら何やってんの?って思われない?」

横で苦笑いしながら見ているサユリ。

別に何って言われても……。

風邪引いた俺に、リュカがお粥を食べさせてくれてるだけなんだけど?

内心は、瑠夏が心配だ。

だけど俺は、リュカが不機嫌になるから言わないでいる。

リュカは、大丈夫って言ってたし……平気だよな?

「ほら、ご飯を食べたら着替えよう」

ニヤニヤ。

「サユリ、お前は出てけ」

「えぇぇ〜、マスター俺の楽しみ奪うなよなぁ〜」

何の楽しみだよ。

リュカは、サユリをつまみ出した。

やはりサユリはリュカには勝てないんだな。

「それじゃあ、うるさいのが居なくなったし……」

「……ああ、そうだな」
リュカが俺の服のボタンを外し始めた。

初めてみる正樹の裸にドキドキしながらボタンを全て外す。

そして包帯に気付いた。

白かった包帯は、もう真っ赤に染まっていた。

ドクンッ……。

ドクンッ……。

「リュカ、大丈夫か?顔色悪いぞ?」

俺は心配してリュカの顔を覗き込んだ。

すると、一瞬リュカの瞳が赤に染まってた気がした。

……しかし、リュカが瞬きをすると元の青色の瞳に戻っていた。

「ゴメン、少し頭冷やしてくる」

そして、俺の元から去るリュカ。

俺は唖然としていた。

リュカって、血が怖いのか?

俺の血を飲もうとした事ねーし。

「……リュカ?」

寝室のドアが開いたからリュカだと思ったが、サユリだった。

「なんだサユリかよ」

「……悪かったね」

サユリは苦笑いしながら入ってきた。

正直、マジでガッカリした。

サユリが俺の横に座る。

俺は、サユリに聞いてみる事にした。
「……なぁサユリ、サユリなら知ってんじゃないのか?」

「何を?」

「リュカが血を怖がる理由」

サユリは沈黙した。

言いたい事は分かる、つまりサユリはリュカに口止めされているって事だ。

口止めされてるとなれば、手段は一つ。

無理にでも聞いてやる。

「サユリって、そんなにリュカが大事なんだ俺より……」

俺は、サユリに近付く。

サユリはビックリしていた。

俺は、上着を脱ぎサユリの肩に手を置く。

サユリの顔は徐々に赤面した。

「……正樹(綺麗だなぁ〜)」

「そんなに、話したくないなら……」

俺は、サユリを押し倒した。

サユリは今、自分のマスターよりも恐ろしい者を見ていた。

自分に馬乗りになってる上半身裸の綺麗で美形な少年なんて、良いシチュエーションじゃん、なんて考えている。

腕をボキボキ鳴らしてなければ……。

この後の事?

フッ聞くなよ。

目の前の美少年に懲りるまでボコボコにされたに決まってんだろ?
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