増血鬼〜裏切りの王子〜

□第五夜:増血鬼
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「……で、なんでリュカは血が怖いの?」

「血……と言うかマッキーの血限定だけど…」

散々ボコられて涙目のサユリは、俺から目を反らしながら言う。

俺の血だけ嫌いって事か?

俺って、そんなにリュカに嫌われてたのか?

「あのね、マッキーの血が特別って事は分かってるよね?」

「……ああ、特殊体質って事だよな」

リュカが頷く。

俺の血は、特殊体質だ。

血が増える……そして吸血鬼達の為に生まれた身体だと言う体質。

「マッキーの血は普通の人間とは違うんだ、美味しいって言った方が良いのかな?」

美味しい?

吸血鬼は、血なら何でも美味しいんじゃないのか?

でも、美味しいならなんでリュカは……。

「マスターはマッキーの血が怖いんだ」

「怖い?なにが…」

「マッキーの血は、普通の人間の何倍の美味さなんだ…そのせいで虜になる吸血鬼も居る」

今のサユリの言葉だと、俺の血の虜になるのが怖いと聞こえる。

そうなのか?
「……マスターは、マッキーを傷付けたくないんだ」

サユリは必死な顔して言う。

リュカは、俺の事を知ってたみたいだ。

他の吸血鬼も俺の事を知っていた。

それと、何か関係があるのか?

「………サユリ」

「まっ、マスター!!!!????」

いつの間に戻って来たのかサユリはビックリした顔をしていた。

俺はリュカの前に立った。

「……正樹?」

「リュカ、俺の血を吸ってくれ」

「ええええぇぇぇぇーーーーー!!!!???」

この場で一番驚いたのはサユリだろう。

リュカは、言葉に詰まりキョトンとしていた。

俺は、リュカの首に腕を回して口元に露になった肩を付ける。

「…さぁ飲め!」

「いや、飲めと言われても…」

「…マッキー、俺の話聞いてた?」

その場に居る俺以外、この状況を把握出来る奴は居なかった。

リュカは、俺の血が怖い。

だったら慣れればいいだろ!

それに、俺だってリュカに助けてくれたお礼はしたい。
こんな事しか出来ないけど……リュカの役に立てるなら……。

しかし、リュカは俺の腕を掴み自分と離した。

「……ゴメン、でも吸えない」

苦しそうなリュカの姿。

なにがダメなんだ?

俺の血は虜になるから?

「…血が美味かったらいくらでも吸って良いから、俺にお礼させてくれよ!!」

「ダメなんだ、それに正樹が居るだけで俺は嬉しいからさ」

……何だよそれ、それなら素直に言えよな。

俺の血は、好きだけど俺は嫌いって事だろ?

そうだよ、普通は美味いもんがあったらほしいのに、俺だからいらないんだ。

俺……だから。

「もういい、勝手にしろ」

「正樹っ!?」

俺は、リュカを横切りマンションを出た。

リュカは追ってこない。

当然だよな、リュカは俺が嫌いなんだから……。

俺は、登校中の生徒達を横目で見て「学校に行かなきゃ」と言う考えがするが、身体は行く気を示さずに家に帰る。

瑠夏もきっと学校には居ない。
俺は、家に着くと自室のベッドで横になる。

今日は、両親共に仕事だから家が静かだ。
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