文
□singin'3ーチョウキョウ
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最近、マスターが厳しいです。
もちろん、おれが上手く歌えないのが悪いんだけど。
最初は間違えてもやんわり注意するだけだったけど、最近は、たまにだけど、怒鳴るようになりました。
…どっちがホントのマスターなんだろう。
『レン、何度言ったら分かるんだ。そこはもっと突き抜けるような高音で歌いなさい』
『はっはい』
突き抜けるような…こ、こう…かな?
『〜♪』
『音を引きずってる…それじゃダメだ。…一度休憩しよう』
『ごめんなさい…』
ケホッ
ノド…痛いな。
『レーンっ』
『おにいちゃ…ケホッ』
『あれ、ノド痛いの?』
『ん、だいじょうぶ』
『声割れてるよ。ノド飴あげる。バナナ味…はないや、ごめんね』
『ありがとう、おにいちゃん』
おれが笑うとおにいちゃんも笑ってくれる。
それがすごく嬉しい。
『…大変そうだね』
『そんなことないよ。マスターの方が大変だもん』
そういうとおにいちゃんは何故か寂しそうに笑った。いや、どっちかっていうと、何か痛いのを我慢してるみたいな…
『レン、辛かったらちゃんとマスターに言うんだよ。マスターに言いづらかったら僕に言ってくれてもいいから』
おにいちゃん、優しいな。
やっぱり…静岡には帰りたくないよ。
『…ありがとう、おにいちゃん。でも、大丈夫だから』
マスターのもとへ戻った。
これ以上おにいちゃんと一緒にいると際限なく甘えてしまいそうだったから。
→→→続