A
□罪人
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自分だけに聞こえるようにそう呟く
赤也は面倒臭いとでも言うかのような顔をして去っていった
(赤也の行動は判らないのに弦一郎の言うことは判ってしまうのは何故か)
あれは弦一郎の口癖だし、誰だって判る
誰だって…
何故か心が痛んだ
「柳ぃ」
突然名前を呼ばれてはっとするが、平然を装う。
「丸井か。なんだ?」
「次数学なんだけどさぁ、忘れちゃったんだよなぁ」
「だから俺に貸して欲しい、ということか。」
「そう!さっすが参謀」
ほら、丸井の行動だってわかるじゃないか
でも少し悲しいのは何故か
そんな気持ちは押し込んで丸井に教科書を渡す
「サンキュー♪あっ、柳さっき何考えてたんだぁ?」
「…特には何も考えていなかったが。なぜだ?」
「いやあ、なんかちょっと楽しそうだったからさ。あ、やべ!もう時間じゃん!じゃあな柳」
俺が楽しそうだった…?
俺が考えていたのは弦一郎のこと
その時俺は楽しそうだった…のか?
俺の気持ちが判らない
(いや、判っているが認めたくない)
そしてまた1時間が過ぎていく
(ああ、また無駄に過ごしてしまった)
ぼ-っとしていると俺の机に数学の教科書が置かれた
(丸井か)