A

□罪人
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そう思い振り返りながら気付く













この匂いは













この姿は…













「丸井から蓮二に渡しておいて欲しいと頼まれてな」



(弦一郎…)



今一番会いたくなかった人物



そして何故か一番逢いたかった人



「そ…そうか」



心の準備ができていなかったせいか、声が震える



目を見れない



「蓮二?」



様子がおかしい俺を心配して近付いてくる弦一郎



(来るな、来るな)



心臓が弾けてしまいそうだ



息がし辛い



「れん」



弦一郎の言葉を遮るように鳴り響く鐘の音



「…ではまた部活でな」



「あ…ああ」



さっきまで見れなかった彼をまた目で追う



頭が真っ白になったあの時一つだけ頭に浮かんだことがある



(俺はこいつとは友達のままではいれないのだろう)



それは認めざるを得ない事実



(ああ、やはり俺は)



弦一郎が好きなのだろう



世間では認められない恋



『禁断の恋』と言ってしまえば美しいのかもしれない



この恋はただの『罪』



しかし、弦一郎の後ろ姿を見つめながら思ったことがある













たとえこの恋が許されないものだとしても














誰かを傷つけることになってしまっても













この人の側にいたい













壁を壊してこの世界が崩れ去ってしまっても














君だけは壊させはしない












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