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□僕の側に
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「仁王、弦一郎を知らないか?」
「真田?みとらんわ」
「真田君なら先ほどあちらの方に行きましたよ」
そういって柳生は西の方向を指した。あの方向にはたしか立海で有名な告白スポットの大木がある。
「おっ、あっちってたしかあの木があるよなぁ?真田にもついに春が来るのか?」
「真田もすみに置けんのぅ。…って柳は?」
「とっくに行きましたよ。まったく、君たちはデリカシーがない…」
「それど-ゆ-ことだよ比呂士ぃ!」
「そのままです。」
「なにを〜!?」
俺はそんな柳生たちのやり取りをよそに弦一郎を捜しにいった。弦一郎がまさかそんなこと…そう思いながらそこに向かっていった。
「あ」
そこにいたのは一人でいる弦一郎。
「心配して損した…げん」
「真田クン待った?ごめんね呼び出したりして。」
俺が弦一郎を呼ぼうとしたその瞬間よくみかける女子が弦一郎の前に現れた。
「いや、今きたところだ」
俺には覗きの趣味はない。
だが俺は彼らの死角になる場所からやり取りをみていた。
近くはなかったので会話は聞こえなかった。
ただ先ほどまで顔を赤らめていた女子が涙を浮かべながら走り去っていくのが見えただけだった。
「弦一郎」
「!蓮二か」
「告白…か?」
「ああ…断ったがな。」
「そうか。『中学生が恋などたるんどる!』ってところか?」
そういって俺は笑った。安心からの微笑み。
「いや…好きな奴がいる。そう言って断った。」
「…え?」
「俺には好きな奴がいる。だから断った」
「そう…か。じゃあ先に戻ってるぞ」
「まて、蓮二」
そういって弦一郎は俺の腕をつかんだ。
「なんだ、弦一郎。はなせ」
「なぜ逃げる?」
「逃げてなどいない」
「では質問をかえる。なぜ泣いている?」
「ないて…など…っ」
「泣いているだろ?なぜお前が泣く?」
「だっ…ておまえに…好きな人…がいるって…俺は…俺はお前が…」
その先を言おうとした。
だが嗚咽がそれを邪魔した。
「蓮二…」
そして優しい暖かさが俺を包んだ。