@
□いつもより少し長い帰り道
1ページ/2ページ
「今日は雨か…参った」
今日の朝しっかりと天気予報を確認してきた。
だが今目にうつるのはいつもよりぼやけた風景
「どうしたものか…傘などもってきていないぞ。」
今週はテスト週間で誰かにかりるにしても生徒はほとんど残っていない。
「仕方ない…走ってかえるか…」
「弦一郎?」
「!蓮二」
そこに立っていたのは蓮二。そして…
「副部長じゃないっすか!!」
「赤也!お前が残っているなど珍しいな…」
「柳先輩に英語教えて貰ってたんすよ!!また赤点はいやっすからね。副部長は何してるんすか?」
「いや、別になにもしとらん。ただ…」
「ああっ!!もしかして傘忘れたんすか!?俺も忘れたんすよ〜」
赤也に見抜かれてしまったのが悔しくて、つい。
「忘れてなどおらん!!」
嘘。
「そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないっすか!!じゃあ柳先輩かえりましょ」
「…」
「柳先輩?」
「赤也すまない。先生に用事があったのを忘れていた。先に帰ってくれ。」
「え?でもオレ傘もってないんすけど…」
「傘ならこれを貸してやる。」
「でも…」
「お前の家は遠いだろ?今日は雨だからいつもより1.42倍時間がかかる。もう日も落ちかけているから、な?赤也」
そういって蓮二は鞄から折畳み傘を取り出し、赤也はそれを不満そうな顔をして受け取り雨の中へと消えていった。
「では蓮二、また明日」
「まて、弦一郎。お前本当は傘忘れただろう?」
「蓮二には見透かされていたか…」
「俺に見抜けないものはない…と言いたいところだが実はお前の母上からこの傘を預かってな」
その手には俺がいつも使っている傘。
「そうか…すまないな。では蓮二また…」
「弦一郎」
「?今度はなんだ」
「実は今俺は傘をもっていない。赤也に渡したあれしかなかったのでな。だから一緒にいれてはくれないか?」
なぜだろう。一瞬胸が高鳴った。
「別にかまわんが…」
「ありがとう。では帰るか」
「先生に用事があるのではなかったのか?」
「明日にする。弦一郎を待たせるのも悪いからな」
そうして二人で傘の中。雨の中二人だけの空間。
なぜだろう。このまま雨の中へ消えてしまいたいと思った。
→あとがき