A

□ルール
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「柳さ-ん」



そう言って俺がいつも見たいに呼ぶと



「なんだ?」



あんたはいつもみたいに微笑み返してくれた



「今日のメニューはなんすか?」



「今日はな…」



当然のように俺はそれを聞いていない。



聞いているのは声だけ、見ているのはあんただけ。



「…でだな…」



一つ一つ言葉を発していく度に揺れる唇。



それに魅せられてついゾクリとする。



その唇を今すぐ食べてしまいたい…



そう思い、近付いてゆく。



「蓮二」



そしてまたいつもみたいに邪魔なのがやってくる。



「弦一郎」



ほら、こいつがやってきた途端あんたの目にはこいつしか映らなくなる。



全部こいつのもんになる。



「赤也、いたのか」



あんたはそうしらばっくれるけど、気付いたんっしょ?



俺が柳さんにキスしようとしたこと。



「いくら副部長より小さいからってそれはないっしょ!」



「すまんすまん。」



そう苦笑しながら俺の頭をぽんぽんと叩く。



あんたはその手で何度柳さんに触れたんだ?



その手で何度あの人を虜にしたんだ?












ソノテガホシイ












「赤也?」



はっとすると俺は副部長の手を掴んでいた。



ギリギリと音をたてて。



「あっ…すみません」



そういって手を離すとその手首は僅かに赤く染まっていた。



「大丈夫か弦一郎?」



フワッとふれるその香りに狂いそうになる。



あ-あ、いっそ












モギトレバヨカッタ













「赤也、走ってきてはどうだ?」



その声にまたはっとする。



やっと俺の名前をヨンでくレた。



「なんで!2人は走らないんすか?」



「俺たちは後で走るさ。心配するな」



「…へ-い」



本当は俺が邪魔なだけ。



それを口に出さないのは俺への愛情か。



それともあいつへの愛か。



少し駆けた所で2人が気になって振り返ってみる。


 
そこには二つの笑顔。



俺には見せたことなんてない二つの笑顔。



ああ、やっぱり俺は副部長には勝てないのか。



俺にはあの人をあんな風にすることはできない…



そうだ。



あの人が駄目ならあいつを壊せばいい



単純なあいつを



俺には甘いあいつを



そして俺はランニングをやめて2人に駆け寄る。



「どうしたんだ赤也?」



俺は口の端を僅かにあげてこう言う。



「好きっすよ、副部長」



俺の名前を何度も呼んでくれるその唇にキス。



ほうら、あんたは俺しか目に映らなくなる。



「あかっ…」



「赤也!!!!!!」



そう俺の名前を叫んだのは俺への憎しみか。



こいつへの怒りか。



それとも防げなかった自分への怒りか。



その場を残して俺はまた走る。



後ろの方でまた俺を呼ぶ声が何回かしたのは現実か、それとも俺の幻聴か。



あの人を奪えないならあいつを壊せばいい。



もう人を愛せないくらい。



あの人に逢えないくらい。




 
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