Novelette

□12921キリリク
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「侍という漢字は“いつでもそばにいる”という意味を持っているそうだ。」

「え・・・?」

「はる。」

「はい・・・?」

「俺の、俺だけの侍になってはくれぬだろうか?」

「・・・かつら、さん・・・?」

「その・・だから、あれだ。俺の小指になってはくれまいか?と言っている、はずだ・・・」



 頬を薄桃色に染め、そっぽを向く桂さんをとても可愛いと思った。

 いつもふざけているように見えて、いつも本気。

 そしてそのギャグのセンス。

 長髪がウザイと言われてもヅラだと言われても傷ついていないような振りをして、実は結構気にしてる。

 それでも、強い意志と熱い信念を持ち、イザという時はとても頼りになるというギャップ。

 その全部が私のストライクゾーンなの、貴方は知っていますか?

「・・よそ見しながら走ると危ないですよ?」

 そう言いながら、私は桂さんの首に優しく抱き付く。


「・・あ、ああ。」


 頬は未だ薄く色付き、前だけを見つめ走るその横顔に、私は『こんな時なのに』とは思いつつも安堵する。


「桂さん。私、立派な侍になれるように頑張ります。」

「・・・ああ。」


 桂さんは一瞬驚きを見せたが、すぐにいつもの飄々とした雰囲気に戻り、力強くうなずく。



 いつの間にか追っ手もまいたようだった。





 攘夷志士として活動し、指名手配犯として真選組に追われる毎日。


 余裕なんてないけれど、安らげる場所を探し求めるのは罪じゃないよね。









→あとがき
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