Novelette

□12921キリリク
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「はぁ、はぁっ!」

 もう走れない。地に膝をつく。

 汗が額や頬を流れ落ちてくる。


 あれから大分走ったが、未だに真選組は追いかけてくる。


「どうした!?」

 桂さんが私に気付き駆け寄ってくる。

「もう、無理、です。桂さん、だけで、逃げて、くだ、さい」

 息が切れて文にすると区切ればかりの言葉を、桂さんに告げる。

「何を言っている!?置いていけるわけがあるか!」

「でも、このまま、じゃ」

「俺は侍だ!」

「小さい、犠牲も、ひつよ、うです」

「お前が犠牲になる事が、俺にとって小さくなければいいのだろう?」

「ぇ?」

「お前自身にとって小さい犠牲でも、俺にとって小さい犠牲でなければいいのだろう?」

「それは」

「そういうわけだ。俺にとってお前がいなくなることはとても・・なんというか、その・・・困る」

「それはどういう」



 意味ですか?



「居やしたァ!こっちでさァ!」

「!」


 沖田の声が聞こえ、バタバタと足音が近付いてくる。


「桂さん、早く逃げ」

「行くぞ!しっかりつかまっていろ!」

「え、ちょ!」


 桂さんは、座り込んでいた私を、俗に言うお姫様抱っこし普通に走っている時と変わらぬ速さで走り出す。


「速さが変わらなければ一人も二人も変わらん。」

「でも」


 邪魔であることは確かなはず。


「はる。」

「なんですか?」

「お前は、侍か?」

「・・そう、なりたいと思っています。」


 だが、それがどうしたというのだろう?


「“侍”という漢字の意味を知っているか?」

「こんな時になんですか?」


 そんな事言ってる場合じゃないのに。


 真選組に追いつかれてしまう。


 早くしないと・・・!




刀@刀@
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