五十の音

□辛くないと嘘を吐く
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【辛くないと嘘を吐く】


昔から、言えなかった
僕は弱虫だったから

達「どうした、元気ないなぁ、ん?晴?」


たまに帰ってきた兄さんが僕を慰めてくれる。
兄さんは僕の憧れだ
それと同時に、コンプレックスだ


だって・・兄さんがすごいから
完璧で、プロに入っても一軍で活躍する
スーパーヒーローだから・・




弟の僕が期待されて辛いんだ



僕は・・・兄さんみたいに強くないし
対照的に駄目駄目で・・・
どうして、僕があなたの弟だったのだろう





達「よし、キャッチボール、久しぶりにするか!」
晴「い、いいよ・・そんな」
達「いいやろ?やろうやあ。ほれ、グローブもて!」
晴「ちょ、兄さん!!」


兄さんは人の気持ちを読むことができる。
だから、僕は本当のことは言わない
大好きな、尊敬する兄さんだから
僕は我慢する・・・・



本当は、野球がつらくて
兄さんがそうやって一緒にいてくれることも辛くて
プレッシャーに押しつぶされそうで
もう、野球が嫌になりそうなんだってことも
言わない。




達「本当に、大丈夫か?」



僕の表情を見て、兄さんがいう
僕は・・いつもの笑顔を浮かべて



晴「うん。大丈夫や」




そう、嘘をつくんだ。


ずっとずっと、


=臆病な僕の心










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