五十の音

□お留守番
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【お留守番(留+一)】


空も晴れて、気分は爽快
乗りなれた自転車をこいでサイクリング
今日は店が休みだから久しぶりの息抜き。


一「あっ、こんなところに新しい家が」


最近はこの町もたくさんの家が建ち、
人が多くなった。
理由は、でっかいスーパーができたから

そのおかげで、随分にぎやかになった。


一「・・・・。俺以外・・・天星元三年組はこの町を出ていったんだっけ・・・」

そう、自分だけ取り残されたような
そんな気分になる。

一「は、はは・・・。」

高校時代はよく、皆で笑いながら練習したもんだ。
今でも、皆と一緒に野球できるように
少しは練習している
だけど、どんどんアノ二人には置いていかれている
足だけは、誰にも負けないとおもうけど


一「一緒に野球してたころが懐かしいよ」


俺は仰ぎ見るように空を見た。
そして昔を思い出していた。


留「こんなところでなにしてんの?」
一「あ、る、留威」

こんな奇遇あるだろうか・・
いまや売れっ子小説家として名を上げている彼に街中でであった

留「店、休みだってかいてたから・・
もしかしたらここかなって・・・」
一「あ、・・・なんか用事あった?」
留「いや・・別に何も・・
ただ、一郎に会いにきただけ」
一「え?」

なんていうタイミング・・
一人感傷にふけっていたじぶんが恥ずかしい

留「一郎、元気ない」
一「そう?元気もりもりなんだけどな」

嘘だ、本当は寂しい、
一人だけこの町に残っているっていうのが
おれだけ、俺だけ残されて・・・
皆に忘れ去られるのかと思うと・・


留「無理しなくていいよ。」
一「ッ!」
留「一郎が哀しそうにしてると俺は心配だ。」
一「かなしくなんか・・してないよ」

いつもだけど、こいつは図星をついてくる。
俺が店を継ぐと決めた時もそう、
俺の心の奥を覗き込むように
留威には何でもお見通しのようだ

留「・・・一郎」
一「俺・・・・寂しいよ・・・留威」
留「・・・」
一「皆、この町の外でがんばってんのに。
俺は、俺はこの町で小さなスポーツ店をついで・・誰にも覚えられないまま死んで行くんだ」

自分で言って哀しくなってきた
今までこらえていたものが
涙という形に表れる

留「一郎、あほやろ」

昔のように留威が俺の頭にポンと手をおいて
ガシガシと撫でる。


留「一郎がいないと俺、この町に帰ってこれないから」
一「!?」
留「美空も達也も虎吉だってそう」

一郎がこの町にいてくれるから
ここに戻ってこれる



=お留守番










一郎君大好きだ!

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