五十の音

□限りなく 青 い 空
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【限りなく 青 い 空(虎吉)】


虎「あぁ、眠れねぇ」

大学の寮生活は苦しくつらい
寮内はむさい男どもの巣で
まぁ、野球部だからだけど、
それでもやっぱり男だらけっていうのは
やっぱり息苦しい。

練習の疲れと、この精神的苦痛が
眠気を誘う。


虎「いっぺん、帰りたいわ」


故郷のあの町へ
のんびりとして落ち着くあの町へ


虎「どうしとるかな・・・一郎。」

唯一、あの町へ残してきたチームメイトにむしょうに会いたくなる
いつも使ってるグローブの点検とか、バットの長さとか重さの相談を理由に
俺は一ヶ月に一度帰郷している
だけども、帰ったら帰ったで
可愛げのない弟・竜兵に「かえってくんなアホ兄貴」などと言われる始末

だから、一郎が一番落ち着く・・・

一郎は、突然の訪問にも悪い顔はせず
グローブの痛んだ場所を直したり
俺に合ったバットを選んでくれる。

時々もっと丁寧に扱えとか怒られるが
それでも、一郎に合うためにわざわざボロボロにしてしまう
今思えばそれは一郎にもグローブにも失礼だが、
俺の精神的な意味でこの休息がほしかったりする。



虎「はぁ、こんな試合、なければね・・・。」


ただいま大学日本選抜チームに選ばれた俺は、
故郷に帰ることさえ出来ない。

あの笑顔に会うことは出来ないのだ



虎「あー、ちくしょ・・・ねむれねぇ」



練習中
グランドにねそべって青空を見た。



=プロやきゅうまであと二年。




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