空色のアルバム
□金髪とbaseball
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[2:金髪とbaseball]
一「こいつが俺と同じ1-2の吉良留威」
「吉良君よろしく。私は5組の白金美空、これは吉長達也。
私のことは美空で良い。その方がなれとるから」
留「…。美空…と達也・・・」
留威は交互に美空と達也の顔を見ていた。
一郎の勧誘を受け、野球部に入部することになった留威は二人と顔を見合わせたのだ。
達「よろしくな。・・・で、野球はやったことあるん?」
留「昔…ちょっとだけ。」
留威は小さな声でぼそぼそといった。
美空はニッと笑って留威の肩をポンポンと叩いた。
「ほんなら、一緒にがんばってこーな」
留「・・。」
「いっとくけど、私らの練習はめっちゃ厳しいで?
それでも・・野球部入ってくれるん?」
達「ちょ、美空っ」
美空は凛として留威の目をまっすぐに見る。
留威はその目線に圧倒された。
今まで女子という女子はうるさい人ばかりで
色目を使っては自分に好きだなんだと言ってきたふざけたやつばかりだったが
美空は違った。いや、この場にいた全員が今までの留威が体験してきた態度とは違った。
本当の自分を見つめてくれている。
留「…俺は、入るって決めたから。」
留威がぶっきらぼうに言うと
美空はニコリとまた濁りのない笑みを浮かべた。
達「ちょっとまったああああ!!!」
「は?」
達「いっとくけどな、え〜と・・留威やっけ。
美空は俺のもんやからな!やらへんz」
「くたばれええええ!!」
達「ぐえふっ。愛がいたいっ」
一「み、みそら〜」
美空が達也に鋭いパンチを決める
一郎は苦笑いしながらも二人の仲裁にはいり
美空をなだめる
留威の顔が少し笑ったように見えた。
?「んだよ、何が野球や・・」
その光景を遠巻きに見ていた不良が盛大な舌打ちをした。
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「もおおおおお!なんやねん!しつこいな」
達「やってぇえ、いつ何時も美空を守りたいんやもん。」
「うぜえ」
達「え?アイシテルッて?」
「…くたばってくれいいかげんに」
達「もう、そんな大胆な告白うれしいな」
「ヘンタイかお前は」
ガスっと美空が達也にチョップをくらわせて
次の教室へと歩いていた。
そのあとを達也は追いかけていた。
今日も部員勧誘のために
?「おう、お前。野球部員やな」
「?」
そこには以前野球部員募集のポスターを引きちぎったみためが金髪不良男子が立っていた。
表情はいまにもキレかかっている。
「そやけど・・・?なに?」
美空は臆することなくその金髪を睨みかえした
まっすぐ、そうまっすぐ
?「い、今すぐあのポスター全部はがせ。」
「なんで?」
?「野球なんて胸糞悪いスポーツ・・・・。
しかも女子のお前がなんで野球なんか」
「野球嫌いなんはあんたのかってやけどな
誰が野球やろうと関係ないやろ」
一「うぉーい。みそら・・・!!!げっ」
?「あ゛あ゛?」
「なに?知り合い?」
一「いや・・知り合いっていうか…」
一郎は覚えていた・・いや、昨日のことだから当たり前だ。
ポスターをはがしているのを偶然見てしまった自分を追いかけまわしてきた人物が目の前にいるのだから・・・。
?「お前、昨日の!」
一「うぎゃあああああああ。」
?「勝手に逃げやがって、このっ」
留「やめなよ。トラッ。」
一郎にずんずんとせまってくるヤンキーの前に留威が立ちふさがった。
一「留威…。」
?「留威・・・てめえ。」
留「俺は…野球部に入ることにした。
だから、俺のチームメイトに手を出すと俺はお前でも容赦はしない。」
?「っ…お前も、野球が嫌いだったじゃねえか!」
留「あぁ・・・嫌いだったさ。でも、ここにいる美空や、達也・・一郎は外見で人を見るんじゃなくて中身を見てくれた。」
留威は無表情のまま、でも威厳のある風格を保っていて
そして美空たちをちらっと見た後、
またその不良に訴えかけた。
留「お前は一番、野球が好きだっただろ・・・・虎吉。」
虎「っ・・・」
「とらきち?それがあんたの名前?」
虎「んだよ、笑いたけりゃ笑え。」
「いい名前やん。」
ニコリと美空は笑った。
そして虎吉に近づいて、その手を握ってこういった。
「野球部は今、深刻なメンバー不足や・・。
だから、君に野球部に入ってほしい。」
美空はまっすぐに虎吉の目を見ていった。