鬼と仏の福笑い

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『2年5組鬼灯桃!!今すぐ生徒指導室に来い!!!!今日こそぜったいにこいよ!!!』


校内アナウンスが耳障りだと
鬼灯はi-podの電源をつけてイヤホンから流れる音楽をいつもの屋上で聞いていた。

初めてのバイトでの給料で手に入れたそれは
心地よいリズムを刻んでいる。


世界からシャットダウンしてくれる
ここは、自分の世界なのだ。


【2:鬼の目にも涙】



鬼「だ・か・ら。ついてくるなって!」
仏「いやや。鬼灯さんがコンビ組んでくれるっていってくれるまで僕はあきらめへん!」
鬼「死ね!」
仏「生きる!」

仏気は嫌というほど鬼灯に付きまとった。
鬼灯は避けるように時間帯をずらして屋上に来るが、いつまでもそいつはまっていた。
何日も何日も続く。


鬼「あーうっざ。あいつほんまにうざいわ!」


中庭のゴミ箱を蹴って鬼灯はイライラしていた。
いつもの鬼灯なら暴力で相手をびびらせて糸を寄り付かなくしているのに
仏気には逆効果で、暴力はきかないらしい。
鬼灯はこのようなタイプにあったことがなく
次は暴言で仏気の心を折ろうとしたが、それもきかない。


鬼「どうしたものか・・」
『おい!見つけぞ鬼灯!』
鬼「げ、柴犬!!おつかれっす!」
『柴田だ!!まて!逃げるな!!!またんかぼけぇ』
鬼「捕まえれるもんなら、捕まえてみいや、鈍足柴犬!」
『柴田だ!!』

鬼灯は、捕まる前に逃げた。
昼休みの中庭はやけに騒々しかった。
体育教師の柴田と鬼灯はまるで父子のようだった。
二人の追いかけっこはいつしかこの学校の名物で今日は、どちらが勝つかという賭けも裏で行われているという。

今日もどうやら鬼灯の勝ちのようだ。


鬼「現役高校生なめんな」


鬼灯は自分の教室へ帰りドカッと自分の席に座った。
周りからは拍手喝采。鬼灯は手を挙げてそれに答えた。

それで、イライラが払拭(ふっしょく)された時だった。


仏「鬼灯さん!!見つけた!」
鬼「あ゛?」


鬼灯の表情は一瞬にして鬼になる。
最強にキレモードだ。
そして、教室の空気は一気に冷えた。


仏「眉間にしわよったら、はよ老けるで?」
鬼「誰がそうさせとるとおもっとんねん」
仏「僕!」
鬼「わかっとるんやったら、さっさと消えてくれへんか、うちの視界から。」
仏「まったまた〜。ぐはぁ!」
鬼「あ〜すっきりした!」


鬼灯は仏気の腹を思いっきり殴り、教室の外に放り出してドアをでかい音とともに閉めた。



鬼「なに、見とんねん。」


鬼灯はぎろりと周囲の人間をにらみつけると
さっと、視線を外された。

そう、これでいい・・。
誰も干渉してこないし、誰もそれ以上かかわることをしない。

鬼灯はこんな容姿でこんな性格だから・・・いつも誰ともかかわってこなかった。

それでよかったのだ
人は一人でも生きていけるから
少なくとも自分はそうだと鬼灯は自分の心に言い聞かせた。




それなのに仏気はずかずかと鬼灯のテリトリーに入ってくる。
シャットダウンしたはずの心にだ。








仏「鬼灯さん♪」
鬼「なんやねん!ついてくんなや!きもいなぁ」
仏「へへへ」


放課後、正門で仏気は待っていた。
鬼灯は全速力で仏気の前を通り過ぎそのまま走って行った。

これでも陸上競技でも全国1位になった鬼灯であるから仏気を突き放すにはちょうど良かったが
それでもしぶとく仏気は付いてきた。


鬼「(きっしょ、あかんで・・ストーカーは!)」


走りでもしぶとく追いかけてくる仏気に鬼灯は作戦を変更した。
大きい通りに入って人ごみに紛れたのだ。
わりと小柄な鬼灯はすっかり人ごみに消えていったのだ。



仏「くそ・・。逃げられた」



通算100回目の鬼灯への尾行を失敗した仏気は軽く舌打ちをして明日に備えた。








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