鬼と仏の福笑い

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『ごめんな、桃ちゃん』
鬼「いいねん、いいねん。仕事忙しいんやろ?桃は一人でも大丈夫やから!」
『そうか・・ごめん。ちゃんとねるんやで?』
鬼「うん・・おやすみ」


電話越しに聞こえる父の声。
誕生日はいつも一人ぼっちだった。



【3:鬼のかく乱】


仏「送っていく」
鬼「別にええ。一人で帰れる。」
仏「遅いし。女の子がこんな時間であるいとったら危ない。」
鬼「誰にいっとん。うちが弱いとでも?」
仏「やって・・・」
鬼「えぇからついてくんな!」

というが仏気はついてくる
鬼灯はあきれて早歩きして、イヤホンを耳に入れた。
音楽は入れてない、だけど聞いているふりをしてはなさないようにしていた。
仏気は相変わらずニコニコとした表情を浮かべていた。
眼鏡の奥は見えなかったがたぶん笑っているんだろうなって思う。



鬼「じゃあな。」
仏「うん。」

鬼灯の住むマンションについたとき、仏気は大きく手を振って素早くポケットに手を入れた。
今日は寒い日で、あの公園で少し話しただけだというのに体が冷えるのだった。
仏気のしぐさを見た鬼灯は、自分のマフラーを外した


鬼「仏気・・・ちょっとしゃがめ」
仏「?」

仏気が少ししゃがみこむと、その首に鬼灯は自分のマフラーをかけてあげた。
仏気は驚いたが、すぐに鬼灯の顔面チョップをくらい現実に戻る。

鬼「よし。…明日返せよ!利子はカツサンドやからな!」
仏「えぇ、おしつけ?」
鬼「嫌なら返せ。今すぐ。」
仏「ううん。これめっちゃあったかい。
明日返すな。ありがとう」
鬼「あと、今日泣いたこと・・」
仏「誰にも言わんよ。大丈夫」

仏気はそれじゃと言って自分の家へと帰って行った。
鬼灯はそれを確認してマンションへと入る



鬼「…さむっ」


ぱちぱちと電気をつけて暖房を入れる。
買ってきた弁当はすっかり冷えていて、鬼灯は盛大に舌打ちをしてから電子レンジにそれを入れた。
誰もいないことはわかっていた。

母は自分が幼いころに亡くなった。
父は医者で帰ってくることなんかなく
帰ってきても自分が家にいない時間帯。
そうやっているうちに、まともに父親に会ったのは一か月前になる。


鬼「ただいま。」


机の上に置かれた母親の写真を見てひとり呟いた。
自分と同じ茶色の髪の女性。


鬼「おかん・・今日、うちな、泣いてしまってん。」


チーンとレンジの音が響いた。
静かな音なのにこの家で一番の大きな音だった。



━━━━━



屋上はいつも通り風が吹いていた。
冬のせいか、それは寒くて
でも、鬼灯の熱くなった脳を冷やすには十分だった。



鬼「(最悪や・・、なんであの時泣いたんやろう)」


どんなに一人でもさみしくはなかったはずなのに
それを暴かれてしまったのだ



仏「ほっおずっきさーーーん♪」
鬼「変なリズムつけんなきしょい」
仏「いやはや、これは僕からの歌プレですわ」
鬼「2度と歌うな」
仏「照れちゃってもー。」
鬼「照れてないわハゲ」
仏「まだハゲとらへん!あ、そうや」
鬼「なんや」
仏「みてやこれ、」

じゃじゃんと言って取り出されたそれは
宴会などで使われるちょび髭メガネ。



鬼「で、どうしろと。」



鬼灯の眉間にしわが入るのもそう時間がかからなかった。



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