鬼と仏の福笑い

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知りたいと思えば耳を開き
真実を語られたら、そこで終わりなきがした。


【6:死んで花実が咲くものか】


気づけば、12月。
テレビではM-1のCMが流れていた。

仏「あぁ、もうすぐでM-1や〜」
鬼「そうやな。」
仏「一緒に見いへん?おもろいで」
鬼「・・・・。」
仏「来年、狙っていくねんから・・・一緒にみようや」
鬼「えぇで」
仏「え?」
鬼「うちくるか?」
仏「う、うん。」

えらくあっさりと、鬼灯がポッキーをかじりながら言うものだから
仏気はぽかんと口をあけた。


鬼「なんやねん。まだ文句あんのか。」
仏「いや、てっきり・・・断られるのかと思った。」
鬼「いややったらえぇねん。別に。」
仏「…家とか、大丈夫なん。」
鬼「おん。別にうち以外誰もおらへんし。」
仏「…。」
鬼「へんな気い使うなや。きもい」

と言ってまたポッキーをポリポリと食べる鬼灯の姿に仏気は少し気を使った。
それ以降休み時間に口を開くことはなかった。


鬼「じゃあな、今日バイトあるし。」
仏「お、おお」


鬼灯は相変わらず仏頂面で店へと走って行った。
仏気はその背中を見つめながら一つため息をついた。


『うち意外誰もおらへんし。』



その言葉が仏気の胸の中でもやもやとしていた。
鬼灯の家の話は聞いたことがない
一様仏気は自分の家とどういう家族構成かということを伝えてはいる。
気になるのは鬼灯の素性。


仏「(つまりは両親がいないということなんか?
だから、バイトしてるんかな・・)」


前のこともあって、これを機会に鬼灯のことを知るチャンスになるかもしれないと
仏気は、いろいろ鬼灯に聞くことを考えていた。。

そして、数日たって約束の日。

すっかり、冬休みに入って会うのも久しぶりだ。
仏気はインターホンを鳴らした。


鬼「よう、まあ入れや」
仏「し、失礼します。」
鬼「なんやそれ」
仏「ん?あ、これな、うちのオカンがなもっていきーって」

はいと言って仏気が差し出したのは肉じゃがだった。
鬼灯の顔が一気に明るくなる。


鬼「うわ、肉じゃがやん。しかもレンコンはいっとる!!!」
仏「え?」
鬼「うちレンコンすきやねん。ありがとうな!!
すげー、おいしそう。」


予想外の鬼灯の喜びように仏気は思わず笑みがこぼれた。
初めて鬼灯が笑っているところを見た気がした。


仏「そうや、2000年からのDVDあるねんけど見る?」
鬼「おん。時間あるし、みようや。」


鬼灯はまあとりあえず座ってと言って仏気をソファに座らせた。
鬼灯は鼻歌を歌いながらレンジのスイッチを入れた。
割と片付いているリビングに仏気はそわそわとしていた。
そして、ある写真が目に入った。
仏気は立ち上がってその写真を手に取った


仏「なあ、この女の人だれ?」
鬼「ん?ああそれ・・・。うちのオカンや!どうや、べっぴんやろ?」
仏「あ…うん。」


鬼灯の顔が一瞬暗くなるのが見えた。
でも一瞬で笑顔に変わって元気に答えた。
仏気はその一瞬を見逃さなかった。
たぶん聞いちゃいけないことなんだろうと仏気は深くは突っ込まなかったが、もう一度その写真に目を移した。


仏「(気ぃ使わせたな…)」
鬼「なあみようや!はよう!」
仏「う、うん。」



鬼灯が無理にテンションをあげてるのは見て取れた。
いつもならキレるか出て行けっていうかの二択のはずなのに
自分の家族のことになると、カバーしたくなるらしい・・・
らしくないと仏気は思った。

本当に聞きたい部分はそこなのに
鬼灯から話してくれないとだめだと思った。
無理やり聞いてもこういうことは、本人から聞きたいから。












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