鬼と仏の福笑い

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【5:傷に塩を塗る】



柴「鬼灯!まつんだ!!」
鬼「チッ、しつこいねん!」

いつものように校内を逃げ回っていた鬼灯。
もちろん鬼灯が優勢なのだが、今日はちょっと違った。


鬼「なんやねん。」
柴「ふふふ、こっちにはネットワークがあるんだ!」

そう、鬼灯がいくら隠れようとも柴田は鬼灯を探し出してしまう。
さすがの鬼灯も体力を消耗していた。


柴「ふ、おいつめたぞ。」
鬼「はぁ、・・はあ・・。」
柴「さあ、この入部届を提出するんだ。」
鬼「嫌やって言っとるやろうがボケエ!!!殺すぞ」
柴「おう、日本一になったら考えてやろう!」
鬼「諦めろ。うちは自由に過ごしたいねん。邪魔すんなクソ柴犬!」
柴「別に、やることないんだろ?
バイトも暇つぶしなんだったら部活をしろ!
それが青春ってもんだろ?」
鬼「暇つぶし?っざけんな!」

耐え切れなくなった鬼灯は
ガンと柴田に殴りかかった。
思った以上に強かったそのパンチは
柴田の胸にクリーンヒットした。


柴「ぐっ、」
鬼「あ、…。」

鬼灯はその手を引っ込めて走り出した。
脇目も振らず、そのままただ、走って行った。
その先は・・屋上。
ついた途端鬼灯はフェンスにもたれかかりその場に座り込んだ。


鬼「く、はぁ・・はあ・・あ・・かん・・。また・・やって・・もうた・・。」

ぐっとこぶしを握り締めた
爪がその手に食い込むほどに。
歯も食いしばって涙を耐えた。

そこへ、ドアの開く音が聞こえた。


仏「あ、鬼灯。もう来とったんや」
鬼「!」
仏「ど、どうしたん。」
鬼「な、なんやねん」
仏「手が・・・。」
鬼「へ?」


仏気は鬼灯の手を握った。
その手は爪をくいこませたことによって血が出ていた。



鬼「な、なんでもないから。」
仏「なんでもないことないって。あ、ティッシュ。」
鬼「!」


パンッと鬼灯が手を払うと仏気はちょっと眉を寄せた。
鬼灯はハッと我に返って今度は唇をかみしめて俯いた。。

鬼「ごめん…。」
仏「どうしたんや、らしくない。」
鬼「なんでもない・・。」
仏「でも」
鬼「今はほっといてくれ…」


鬼灯はさっと仏気の横を通り過ぎて
何も言わずその日、鬼灯は早退した。
仏気は学校が終わるまで鬼灯がどうしてあんなに悲しそうなのかと考えていた。



『ねぇ、聞いた?鬼灯さんまた先生たたいたんだって』
『えぇ?マジで?』
『でも、毎度すっきりするよね〜。もっと殴ってもいいのに、2年になってからおとなしくなったよね』
『でも、ここの学校のボスなんでしょ?』
『マジ憧れーって感じ!』

教室の隅で女子達が話しているのを偶然仏気は聞いた。
この学校に転校してきて2ヵ月なので、仏気はほとんどといっていいほどこの学校のこともこの学校での鬼灯のこともあまり知らない。


仏「その話、聞かせてくれないかな」
『え?あ・・』
『私たちで良いなら喜んで』

一気に女子たちの声色が変わった。
それもそのはず、眼鏡を外した仏気は女子たちの注目の的になっていたからだ。











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