鬼と仏の福笑い

□13
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それは、過去
少し前の・・・



【13:災い転じて、福となす】


仏気はひとつ気になることがあった
それは鬼灯がここ一週間遅刻してやってくるのだ。
仏気は、その理由がわからず鬼灯に尋ねたが
いつも帰ってくる答えは『寝坊』の一言。
そして、もう一つは東のことだ。
東はあれだけ鬼灯を慕っていたのにぱたりと目の前に現れなくなったのだった。



仏「何が・・・。」
大「それは、仏気さんには介入できないことじゃないですか。」
仏「っ!!いつの間に現れた、この野郎。」
大「ひどくないっすか。」
仏「俺は、まだ、お前を好きじゃないからな!」
大「俺もあんたのこといけすかないのは同じですから。」
仏「なんやと!」
大「それより、桃さん来ませんね。」



屋上に男二人、一人の女の子を待っていた。
そう、鬼灯桃を。
しかし、いつも通りのお昼休みに鬼灯が屋上に現れることがなかった。





仏「よし、探しに行くか・・・。」
大「…いってらっしゃい。」


大倉は適当に仏気をあしらってそのまま屋上に残った。
その理由は…。



大「そこにいるのはわかってるぞ〜。東胡桃。」
東「!」
大「やっぱりな。どうりで桃さんが来ないわけだ。」

東は物陰からスッと現れて、今にも泣きそうな表情をしていた。
大倉は気にも留めず続けて行った。



大「あんた、桃さんになんていったんだい?」
東「…。」
大「まあ、大方、消えろとかいうこと言ったんだろうな。
桃さんが現れない様子じゃあ。」
東「ど、・・して。」
大「俺くらいになると、だいたい女子のもめごとってわかっちゃうんだよね。」


大倉は東に背を向けてフェンスを思いっきり蹴った。
ガチャンと大きな音が鳴ったので東はびくりと肩を震わせた。


大「でもさ、桃さんをただの女の子と思っちゃあいけない。
あの人、ああ見えて人の気持ち読める人だから、
自分を拒む人は近づかないよ。」
東「私・・・。」
大「…。」
東「私、桃ちゃんにひどいこと言ったの。」



東は声を震わせながら弱弱しく涙を流した。
大倉はそれでも東の方を振り返らなかった。


東「桃ちゃんなんていなかったらよかったのにって・・・。私、私・・・」
大「知らねえよ。そんなの。」
東「え?」
大「他人の存在を否定するっていうことは、
相当な覚悟できてんだろ?
そんなこともできてなくて桃さん傷つけたのか・・・。あんた最低。」
東「…う・・うぅ。」
大「後悔してんなら、なんでそんなこと言ったの。もとはといえば俺が悪いんだけどさあ・・・。
あれだよあんたは仏気サンに告ったらいいだけっつったろ。」


大倉はガシガシと頭をかいて東のほうに向きなおって言う。



大「あんた、逆恨みもいいところだぜ。」
東「…。」
大「何があったんだ?…桃さんとの間に。」
東「…。」
大「あれだ、別に同情じゃねえかんな、
桃さんのこと知りたいから、あんたに聞いてんだ。」



大倉は大いに訂正して東が語ってくれるまで待った。
一方で、渡り廊下で鬼灯を見つけた仏気が問い詰めていた。


仏「で、明らか東さんのこと避けてるけど
なんでや?」
鬼「お前には関係ない。」
仏「またそんなこと言う。俺は、鬼灯の相方や何でも話せ言うたやろ」
鬼「…」
仏「わかったわかった、特別に俺のスリーサイズ教えたるから、鬼灯も」
鬼「胸糞悪いから教えんな。
ん・・まあ、教えれんこともないんやけど。
全部うちが悪いから・・。」
仏「?」


それは鬼灯と東が入学したての頃だった。
クラスは一緒で、もともと内気だった東は周りになじめず、バスケでもワンマンプレイだった。
しかし、たまたま席が隣だった鬼灯が東の元気を引っ張り出させてあげるように言葉を描けてやったのが始まりだった。


『べつに自分は自分やろ、相手に合わせる必要ない。』

そう鬼灯がアドバイスした日から東は荷が軽くなり、そして周りに溶け込めるようになった。
2人は親友になった・・が・・それがあだになった。



『鬼灯。お前、この女にけがさせてもいいのか?』
『お前ら、卑怯やぞ!』
『うっせえ、一年に俺らの縄張り荒らされて黙ってるセンパイじゃねえんだよ!』
『桃ちゃん!危ない!』
『胡桃!!』


複数の不良たちが一斉に鬼灯に殴りにかかろうとした時だった。
東が鬼灯をかばってけがをした。
罪悪感でいっぱいになった鬼灯は、東が帰ってくるまでつぐないとしてバスケ部に入った・・。





鬼「うちが、胡桃を巻き込んだんや・・・。
うちがいなかったらよかってん。
うちは胡桃に恨まれても文句は言われへんねんや・・・。」
仏「…。そんなこと、鬼灯が悪いわけじゃないやん!」
鬼「でも、うちが、うちがこんなんやから・・・うちとかかわらんかったら
今頃、胡桃はもっと幸せやったんやで・・?」


鬼灯は声を大きくして仏気に言った。
少々乱暴だったっと鬼灯は仏気に謝った。



仏「違う。鬼灯は悪ない、悪いのはその不良共やろ?」
鬼「でも、」
仏「それに、もうずいぶんそれに苦しんだやん」

仏気は鬼灯の頭を撫でようとしたが避けられた。
鬼灯は申し訳なさそうに苦笑いしていった。


鬼「それでも、だれも救われてへん。」





それはひどく、静かな苦しさだった。



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