鬼と仏の福笑い

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【14:喉元を過ぎれば熱さ忘れる。】


仏「うぉおおお!鬼灯!なあ!鬼灯!ってば!」
鬼「なんやねん。聞こえとるわぼけえ、毛根死滅したろかボケナスが!!」
仏「ひどっ!って、ああこれ見てえな!」


と、仏気は鬼灯に何やら文字の書かれた紙を渡された。
鬼灯は怪しげにそれを読んでいく。


鬼「ん・・・『エントリーナンバー02564…クリエイターズ…大会は・・』・・って!これm−1の?」
仏「そう、エントリーしといた!」
鬼「いつ?」
仏「昨日。桃ちゃんがしといてーっていってたやん。」
鬼「マジか・・・。ってか、さらりとうちのこと桃ちゃんっていうのやめてくれへん?」
仏「いいやん。可愛らしいのに。」
鬼「うるさい黙れ。その口ん中に鳩詰められたくなかったら・だまれ☆」
仏「うわー素晴らしい笑顔やね、目が笑ってへんよー」

鬼灯はもう一度紙に目を移してしっかりと読んでいた。
それを見た仏気が横からエントリーナンバーを指でさす。


鬼「なんやねん。殴られたいんか?」
仏「違う違う。あー・・・やっぱ気づかんか・・・」
鬼「なにがやねん。」
仏「そのな数字読み方変えてみ。」
鬼「読み方?え・・っと、れ・・に・・こむし?」
仏「ちゃうちゃう。
お、に、ご、ろ、し・・。『鬼殺し』って読めるねん。」
鬼「あてつけか。」
仏「ちゃうちゃう。なんか、縁起モンみたいでいいかなって。」
鬼「なあ、仏気よ、うちの苗字に『鬼』がついとるんしっとるやんな?」
仏「え・・・・あ。ほんまや・・・・。」
鬼「縁起もん言うぐらいならこんな数字は逆に不吉やんけ!」
仏「アイタッ」


鬼灯はもう一回仏気の頭をはたいてから地面に寝転がる。
もうすぐ一年間やってきた成果が表れる。


じりじりと焼けるような暑さに鬼灯は舌打ちをしてうちわで自分を扇いだ。

仏「あ、それ、」
鬼「なんやねん。」
仏「それって阪神のうちわやん!なんでもっとんの!」
鬼「あ?これ、土産にもらっただけ。」
仏「ええなあ、ええなあ。それ美空ちゃんと吉長がうつっとるやん!」
鬼「…お前って阪神ファン?」
仏「うん。最近でいうとルーキーの美空ちゃんと吉長のバッテリーが好きやな」
鬼「そっか、お前もか・・・」
仏「も?…」
鬼「さ、帰んで。」


鬼灯は勢いよく立ち上がりすたすたと階段を下りていった。
その背中には少し悲しそうな表情も見て取れたのだが何時ものように鬼灯の後を仏気が追いかけるのだった。


仏「東さんは野球見ないんか〜。」
東「うん。私はバスケ一筋だから。」
仏「で、お前は?」
大「桃さん以外に興味ないです☆」
仏「あ、そ・・。」
鬼「…。」



にぎやかな帰り道。東と鬼灯が仲直りしてからというもの、鬼灯はバイトの日以外は東の部活が終わるまで学校に残っていた。
人と付き合うのが嫌いだった鬼灯にしては大きな進歩だった。
帰るルートはほぼ決まっている。
さきに東を送り届け大倉の家の前を通りそして鬼灯の家を通っての帰り道だった。
東と大倉と離れ二人きりになった帰り。
何時ものように他愛ない話で盛り上がるはずだった。





「ああ、桃ちゃん。おかえり、今行こうと思っていたところなの」


マンションのエントランスの前で偶然にも鬼灯の知人であろう大人の男女2人がたっていた





鬼「優(すぐる)さん…。蒼(あおい)さん…。」


鬼灯はその二人を見て一目散に二人のもとへ走って行った。





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