short stories 1

□Halloween 2011
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「おかえりなさい!」

玄関の扉を開ければ、いつものように細くしなやかな身体が腕の中に飛び込んでくる。

だが自身の胸元で揺れるのはいつものピンクのリボンではなく、何故かオレンジ色のカボチャが三角の恐ろしい目でセフィロスをじっと睨んでいた。

「おかえりなさい、セフィロス」

見上げてくる花の唇に条件反射で軽く口づけ、それでも一体これはなんだとエアリスに問いかけようとした口が突然固まった。

「ね?可愛いでしょ?」

身体を離したエアリスが、目の前でくるりと一回りしてみせる。

それに合わせて、髪を飾るカボチャの化け物と身に付けた黒いミニのワンピースがふわりと浮き上がった。

その瞬間、むき出しの肩と強調された胸元、そしてスラリとした白い太股に思わず目が釘付けになる。

彼女はどちらかと言うとロングスカートを好むらしく、ミニスカートをはくことは滅多にない。

夏のバカンスでは確かに水着を着るが、陽に焼けるのを気にしてか、パレオという実に邪魔な布を身体に巻き付けていることが多かった。

それが一体何のためか、今は堂々と太股を見せるミニスカートをはいているのだ。

部屋の明かりに照らされた肌がやけに青白く見え、その艶かしさに知らず喉がゴクリと鳴る。

あくまでも表面上は冷静さを保ちながら、セフィロスはニコニコと微笑むエアリスに尋ねた。

「……エアリス。それは一体…」

すると、エアリスの顔に更なる笑顔が広がって行く。

「明日のハロウィンパーティ、これ着て行くの。魔女みたいでしょ?」

確か明日はティファの店でハロウィンの集まりがあるとは聞いていた。

なるほどそれは魔女の仮装だったのかと、やっと納得の行ったセフィロスであった。

が、何故そんなにも脚を出さなければならないのだろう。

ハロウィンとは、仮装した女性がわざと脚を出してそれを見せ合う祭……とは確かジェネシスも言ってはいなかったはずだ。

世の中のイベントにひたすら疎い神羅の英雄は、今ある知識を総動員して必死に考えた。

「そんなとこ、立ってないで。中も見て」

そしてエアリスに手を引かれリビングに入れば、今度は大小無数の顔のあるカボチャが、再び三角の目でこの家の主人の帰宅を無言で見つめていた。

「作り方、アンジールに教わったの。上手く出来たでしょ?」

確かに見事なカボチャの化け物だが、この数の多さは何なのだ。

広いリビングは無数のカボチャに占領され、今や足の踏み場もない。

一体ここはいつからカボチャ屋敷になったのだろう。

だが、エアリスのやることを批判することは絶対に出来ない。

セフィロスの胸中が様々な想いで揺れる。

するとそんなセフィロスを見て、エアリスがすまなそうに言った。

「これ、半分以上、明日の朝教会に持って行くの。昼間、子ども達とパーティ、するから。後は夜用。ちゃんと片付けとくから、心配しないで」
「……そうか。いや、別に構わないが」
「そうだ!!」

今度は一体何事かと、突然大きな声で叫んだエアリスを見る。

するとエアリスはキッチンへ走り、何やら大きな紙袋を抱えて戻ってきた。

そして中身を開け、黒い洋服らしきものをセフィロスに差し出した。

「明日、一緒にパーティ、行ってくれるでしょ?これ、着て貰いたいの」
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