titles

□たわんだ赤い糸の先
1ページ/1ページ

人は死んだらどこへ行くの?

肉体が滅びても魂は存在するという事は、幼い頃から知っていた。

だから怖いというよりもわたしにとってはちょっとした冒険気分で。

ただ思い出のある身体を失うのが辛いのは、仕方のないことなのよね。

大好きな人達に逢えなくなるのも淋しいけれど。

人は皆、いつかはこうなるものだから。

物事には始まりがあり

そして必ず終わりが来る。

だけどあなたが言う通り、これが二人の未来のために必要不可欠な要素なのだとしたら。

全ては終わったのではなく

新しく始めるための第一歩となる。

『エアリス』

ああ、懐かしい声。

…おかあさん。

『まだ、早過ぎるでしょう?』

何が早いの?

わたしがここに来ることが?

『エアリス』

ふわり。

温かな腕に抱きしめられる。

おかあさん

おかあさん

……おかあさん。

何から話せばいいかしら。

わたし、沢山友達が出来たの。

共に闘う、仲間がいたの。

……そして。

世界で一番大事な人が、わたしを待って……

ああ… ダメ。

瞼が重くて。

段々と考えることが難しくなってくる。

…お願い、おかあさん。

なんだか疲れてしまったみたい。

だから今は、もう眠らせて。

“時”が来るまでゆっくり休みたい。

意識が拡散していく間際に見えたのは、目に焼き付いたあの人の後ろ姿。

大丈夫。

あなたもわたしも。

全てはこれからなのだから。

『おやすみ…… エアリス』

全ては

星の瞬くその時に、また。






「たわんだ赤い糸の先」〜キンモクセイが泣いた夜〜より
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ