sing novel
□親愛なるあなたへ
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彼は、海の見える綺麗な丘の上に眠っている。
外に出ると人が多い。
通勤ラッシュの時間帯。
足早な人並み。
立ち止まって空あおいでみれば、桜が咲いていて。
優しかったあの日が甦ってきた。
あの彼と居た春の優しい風が恋しくなって。
あの日の風を待ちわびてみたりした・・・。
そのとき・・・。
願いが通じたかのように。
あの日の懐かしく優しいこの強い風が。
ほら、桜の花びらを舞い上がらせる。
あたしの記憶も甦らせる程の強い風。
そして、あなたと見た最後の春を思う。
うつむくまで気付きもしなかった。
あんなにも近くにいたのに・・・。
どうしてだろう?泣いていた。