アンド、ユー?

□ハロー、マイイエスタデイ
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昔好きだった人を、夢に見た。
あの頃のわたしは彼をほんとうに愛していた。片思いだった。
もう何年も忘れていたはずだった。

伝えるつもりはない。望みがないとわかっているから。
何年も閉じ込めてきた思いとともに、卒業するのだ。
そしてその通りになった。人に囲まれる彼に最後らしい挨拶もできずに。あっけない現実の終わり。
必死に守っていたものは、譲れないプライドとほんの少しの期待だったのだと悟ったのはいつだったか。

夢のわたしはまさしく夢のようではなかったが、いくらかドラマチックに脚色された。
ヒトの前で感情を飽和させることなど、あの頃のわたしには(そして今でも)あり得ない。
泣きながら廊下を駆けるわたしは我ながら滑稽で、少し微笑ましい。告白の前で目は覚めたが、きっとそれでよかった。体中をきらきらさせた少女は、何よりも魅力的に見えた。
そうやってなりふり構わずいられたら、何かが変わっていたのだろうか。
今となっては、答えの出しようもない。

あの頃、溢れそうになる気持ちをこらえながら、現実のわたしは精一杯生きた。後悔ばかりだとしても、彼への気持ちで満たされていた。
忘れたい過去としてではなく、ひとつの思い出として受けとめられる日がようやく来たような気がする。

あれは、恋だった。






 

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