3 Z

□Midnight
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Midnight


深夜二時。
テレビの光が暗い部屋を、黄色くしたり青くしたり。
俺たちの目は悪くなっていく。

背中を壁に預け、ベッドに座る。
俺はコーラ、隣に座る万斉はジンジャーエールを、瓶から口飲み。
俺は炭酸とか、好きじゃない。

テレビは某局の音楽番組。
80'sの洋楽ばかりを取り扱っている。
俺は全然興味ない。
隣の万斉が少し躯を動かした。


Radio Ga Ga / QUEEN

バカにでかい新型の薄型テレビには80年代の荒い画像が流れる。
SFチックな世界観、そして80年代特有の即席麺のような長髪の男たちがギターを弾きまくっている。
興味のない俺でも名前くらいなら聞いたことがあるバンド。

俺はテレビを見つめながら躯をずりさげ、頭を万斉の肩に乗せる。
すると俺の頭部に万斉の頭が寄りかかってくる。
万斉の、グラサンのない髪の垂れた姿を見た人間は何人いるんだろう。
少なくとも俺で一人。

番組はいつものシメで終わる。
万斉はジンジャーエールを飲み干して、瓶を床に置く。
明日、俺か万斉のどちらかが転ぶかもしれない。
俺は半分以上残っているコーラをどうするか考えるのが常だ。

番組のあとを、宣伝じみたものが流れていく。
最新型のテレビに最新の映像。
俺は欠伸をひとつする。
万斉は俺からコーラを受け取ると口に含んで微妙な顔をする、いつも。
だって、炭酸が抜けている。

そんな万斉を見上げると、気の抜けたコーラを流し込まれる。
万斉の口内で少し温まった甘い水。
でも、0カロリーだ。
コーラに便乗した舌が俺の口内をさまよって、顔中にキスの雨が降る。
万斉はこの時間帯、キス魔になる。
でも、俺は眠いよ。

テレビからはセイブツタヨウセイなんて言葉が聞こえる。

「あ、退。」

万斉が画面に向かって呟く。

「なに?」

「今、退にそっくりな動物がいたでござる。」

笑って云う万斉。
何か失礼な方向を考えていたな、こいつ。

「どんな動物?」

「えーと…名前が思い出せないでござる…何だったか…」

「万斉、老化の始まりだね。もう、寝るよ俺。」

布団に潜り込む。
すぐに万斉の手が俺の腰に回る。
雑音が消えた。
万斉の匂いに包まれる。

「おやすみ、退。」

「…ん。」


頭の中で今日聞いた曲が流れる。
万斉と生活を始めてからは、知らなかった音楽に出会う毎日。
毎晩、目を閉じると頭には音があふれる。

毎晩、万斉の香りの中で眠る。

実はこの匂いがないと眠れないとか、
あの顔中にされるキスが好きだとか、
グラサンの下の目と爪が綺麗な指が好きだとか、


愛してる とか。




…云わないけどね。


ひとまず、
今の生活は悪くない。

くらいは云っておこうかな。





*************
同棲始めた二人の日常。
退は大学に通って、万斉は相変わらず銀魂高校の音楽教師^^

QUEENの歌は本当に洋楽/倶楽部でやってたので。

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