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□聖夜篇 土銀
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土銀 3Z
◆聖夜篇◇
「先生、今日は外で食べませんか」
大多数の恋人達がイチャイチャする日だと信じている今日。
土方から誘われた。
*****
教師と教え子という関係以上の俺たちは俺の家以外ではあまり、というか全然会ったことがない。
だからって別に、外で会わない事に何も感じてはいない。
家の方が落ち着くし。
そして土方と会うときは俺の家、と何故か割り切っていた俺は昼休みにそっと告げられた誘いに少し戸惑った。
「外…?」
「…なにか外だと不都合ですか。」
「いや…そういう訳じゃねぇんだけど…」
「じゃあ、7時30分に迎えに行きますんで」
「あ…うん。」
土方は俺の返事を聞くとさっさと戻っていく。
俺は頭を掻きながらその背中を見ていた。
*****
7時30分ぴったりの時間に家のドアを叩く音がする。
ドアを開けてひとまず招き入れる。
「先生まだ着替えてなかったんすか。」
「うん、土方が来てからでいいかな〜と思ってさ。」
俺は着替えながら尋ねる。
「で、何食いにいくの?」
「ハンバーグです」
「ハンバーグぅ?なんで?」
俺はズボンをはきながらベッドの縁に腰掛けている土方を見る。
「いや…山崎からおいしいハンバーグの店教えてもらったんで」
「お前、ハンバーグ好きだったっけ。」
「普通です」
「何それ。じゃなんでハンバーグなの」
「イヤですか」
「…別にイヤじゃないけど、さ。」
「…デザートのケーキがうまいらしいんで…」
「!あっ…そうなの!それで誘ったんだ〜、ふぅぅん、土方クンやっさすぃ〜」
「////」
ぼそりと告げられた、土方がハンバーグにこだわる真の目的にニマニマしてしまう。
ぶっきらぼうでも優しい奴だって知っている。
だが、俺は現実に気がついて。
「あ…でも給料日前だから俺金持ってないんだけど。」
「俺が出しますんで。」
土方の即答に迷う。
いつもは俺が出す、(いやまぁ、肉まん程度だけど)一応年上なので。
土方だけにお金を出させる事に抵抗があって。
俺は言葉を濁らせた。
「あ〜…でも教え子に金出してもらうってのも…」
「今は教え子の前に先生の恋人です。」
「!…あぁ、そうね…」
って自分も俺の事先生って呼んでるし…
強い眼差しで否定してきた、いつもと違う土方の様子に少し戸惑いつつも、クリスマスと云うこともあって玄関へ向かう俺は浮き足だった。
*****
首にマフラーを巻きつけて外に出る。
外には雪が…なんてロマンチックなこともなく、いつも通りだった。
むしろぬかるんでいて歩きづらい。
俺たちはたわいもない話をしながら店へと向かう。
俺も土方も学校の誰かに見られれば不審に思われると分かっていたが、さして周りを気にしなかった。
コソコソなんて阿呆らしいし、堂々と歩きたかった。