3 Z

-沖田サイド-
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実は、最近悩みがある。

新八と付き合って3ヶ月、未だにキスをしていないこと。

普通、これ位の期間あれば、キスの一つや二つ、かましてると思う。
で、俺は。

正直、飢えてる。

なんで、キスしない?
ってか、キス出来ない?

雰囲気がない、新八にその気がない、新八は興味ないっぽい。

男子高校生じゃないみたいで、もう還暦迎えた夫婦みたいな。

そんな関係。

でも俺は、そろそろしたから!
新八!
こうなったら行動あるのみでさぁ!


〈君の恥じらい僕の掴む手〉
       -沖田サイド-



「え、キス…?」


新八が呟いて顔を傾ける。
よくやる、俺の好きな仕草だども。
今は傾けられると凹まぁ。

気を取り直して、明るく話題を深めよう。


「そ、キスでさ。いつになったら俺たちはキスするんで?」


って…新八の顔が相当かわいくなくなっちまったんだけど。

箸、落としたぜぃ。

俺は紳士(新八にはホントに紳士だぜぃ!)だから拾ってあげる。
ついでに新八の弁当包みで拭ってやって、いい彼氏だろぃ?

箸を受け取った新八は、今度は怒った顔だ。


「な、なんで今っ…ここ教室ですよ!?」

「どうせ誰も聞いてないぜぃ。」

「わかんないでしょ!」


警戒するように辺りを見回す新八に合わせて俺も視線を巡らす。

みんな、飯食ってる。
お喋りに夢中だし。
オエッ…土方の犬の餌見ちまった。

誰も、窓際でメシ食ってる俺達なんか気にしてない。

レンズ越し、普通サイズの目を此方に向けた新八に笑いかける。


「ほら、ねぃ?」


ボソボソと新八が云った。


「ぅっ…ですけど、今までそんな事云わなかったじゃないですか…」

「そりゃ、我慢してたんでさぁ。」

「え…ぁ、ぁー…」


我慢してた、なんて云われたら言い返せないだろぃ。

だからって、曖昧にしながら弁当に顔を戻す新八を許しはしない。


「俺とキス、したくないんで?」


拗ねたようにしてみせる。
すると観念したのか箸を置いた新八が困った顔で、


「違…まだ、早くないですか…?」


なんて訊くから。

早い!?
素っ頓狂な声が俺の口から上がる。


「早いもんか!今時保育園児でも朝ちゅーすらぁ!」

「声、でかいっ!」

「俺たち、保育園児より健全な付き合いなんだぜぃ。いい加減遅れてらぁ。」

「えぇー最近の子供って…ませてるなぁ…」


違う違う。
俺らがおかしいんだ。

話を戻そう。


「で?キス、したくないんで?」


新八は暫く考える素振り。
そこは即答して欲しかったぜぃ…。
勿論『したい』で。
しかも早くしないと、昼が終わってしまう。
ところが新八は他人事のように云った。


「想像、出来ないんですよねー…」

「何て?」

「ですから…うーん、僕が沖田さんとキスする?とか想像出来ないんですよ。」


想像って…
キスに想像が必要かい?


「キスを知らない訳じゃないだろぃ。」

「そりゃ、キスぐらい知ってますよ。…したことないけど…」

「じゃ、何…」

「僕の中で沖田さんとキスするって意識ないんです。違和感…かな?」


違和感。
したことないから…?
なら、したらいいんじゃないか?


「オーライでさ、新八。」


立ち上がって云うとポカンとする。


「は?」

「行こうぜぃ」

「え、ちょっと!?」


俺は新八の腕を掴んで印刷室へ向かった。

******

前から、いいんじゃないかと思っていた印刷室。
人、来ねぇからね。
ドアに押し込み内側から鍵を掛けると。
慌てたような新八の声。


「沖田さん、なんすか…ちょっと…」


戸惑う新八に近付く。

だってねぃ。
わからねぇんだろい?
キス?
なら、実践あるのみ。


「実際体験してみないとわからないだろぃ?」

「え…ぁ…」


新八を古紙が積まれた棚に追い込み。
手を絡めやんわりと揉む。
柔らかい手。
性感あるんだけど、効果はあるのかな。
まぁ、折角だから雰囲気をね、作らないと。
これ位の方が新八もいいんじゃないか。
見上げてくるし。
嫌がらねえし。
目、閉じないのは我慢するか。

ちゅ...

おぉ。
触れるだけだけど。
新八意外に平気なんじゃねぇかな。

自分の唇を舐めると微かに弁当のおかずの味がした。

今度はもうちょっと進んでみるか。

顎に手をあて持ち上げる。
新八は目を閉じて。
お、乗り気?
やったねぃ!

今度はゆっくりと唇を合わせて。
うん、いいじゃねぇかぃ。
キスできそ…


「ぁ…や、いやだ…っ!」

「っ!」


え?

胸に衝撃。
気がついたら唇が離れて。
眼鏡を落とした新八が、顔を歪めていた。

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