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□ペット或いは
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蓮峯族云々が判明する少し前のお話。




「銀時、聞いてくれるか。」

「いや、帰ってくれる?」

「エリザベスの事なんだが」

「おい、なに話はじめてんの。帰れっていったよな。」


昼下がり、万事屋に桂がやって来た。
いつものように茶菓子を持参しているが、エリザベスは連れていない。
茶菓子はちゃっかり受け取って、しかし面倒なので追い返したい銀時は茶も出さずソファーに寝そべっている。
今は新八も神楽もいないので、他に彼に構う相手はいないのだが、それでも桂は話し出した。


「知っての通りエリザベスと俺はペットと主人を越えて相棒、もはや家族同然だ。」

「お前の家族、あれでいいわけ?」

「賢いし可愛いし頼りになる、同然だ。ところで…定春は夜どこで寝る?」


銀時は寝そべったまま菓子を食べつつ、眉をあげる。



「定春?そんなの居間とか炬燵とかだけど。」

「うむ、布団に入ってきたりはしないのか。」

「寄り添うことはあってもあのデカさだ、布団に入りきらねーよ。あいつもわかってる。」

「なるほどな。しかし、ペットの中には布団に入って主人と眠るモノもいると聞く。」

「なんの話?一人寝が寂しいからって定春は貸さねーぞ」

「違う、論点はそこではない。あのな…最近布団に入ってくるのだ。」


そう言ってため息をつく桂。
銀時は白いペンギンお化けを思い出す。
優に自分を越える体長、どこを見て、何を考えているのかわからない瞳。
たまに怪しげな者が覗く黄色い嘴。
それと桂が同じ布団に寝ている様子を想像する。
シュールだ。


「え?何、ペンギンお化けと一緒に寝てんの。そりゃ、仲良しでなによりな。」

「うむ、最初は驚いたが俺もそう感じていた。寒い時期だし、同じ布団で寝るのも悪くないと。しかし…」


桂はまたため息をひとつして、脚をもぞりと動かした。


「どうも変なのだ。」


変も何も存在が変だ、と銀時は思う。


「始めは普通に隣で寝ていたんだが、段々くっついてきて、俺は寒いのかなーと思っていたんだ。
それから暫くした頃に、俺の脚に足をくっつけてきてな。不思議なことにあの短い足が妙に長く絡まる感じでジョリジョリとした感触でな。」


なんだか話はおかしな方向だ。
銀時は体を起こすと眉をひそめる。
桂は認めないが、エリザベスの裾からはオッサンの足が見えるし十中八九、中はアヤシイオッサンだろう。


「エリザベスの息遣いも荒くなって、俺は布団が息苦しいのかと思って布団を退けてやったこともある。だが違うようだし、鼾よりはいいと思い、俺も馴れてしまったんだ。熟睡型だし。」

「目開けて寝てんのにな。」

「昨日の事だ、耳元で苦しそうな声がして目覚めたんだ。いつものように足が絡みついていたが、その力が強くてな。悪夢でも見てるのかと思ったんだ。」

「もはやその光景が悪夢だけどね。」

「手を少し動かしたら…触ったんだ。」
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