Silver Soul
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ハァ、ハァ、と新八の喘ぐ声が後ろから聞こえる。
だが銀時は歩調を緩めない。
人混みを避けながらずんずんと進みそのままに万事屋に着いた。
足音を立てて階段を上がり灯りの無い万事屋へ入る。
その間銀時は終始無言だった。
******
『新八見つかったアルカ!今から帰るネ!』
「あ--いい、いい。もう暗いから、今日はそっちに居ろ。」
『でも話し聞きたいヨ!あ、姉御に代わるネ』
受話器の向こうでゴソリと人が動く気配がして。
『こんばんは、銀さん』
と、お妙が出た。
「今日は」
『わかってます、神楽ちゃんはちゃんとウチで預かりますから心配しないで下さい。』
今日はお店休みですから、とお妙が付け加える。
後ろで姉御、代わって!と騒ぐ神楽の声が聞こえた。
『で。新ちゃん何処に居たんですか?』
「万事屋に帰ってたわ」
銀時の答えに数秒間お妙が黙る。
暫くして、
『そうですか、なら良かったです。銀さん新ちゃんの事お願いしますね。』
と云って電話を切った。
銀時は受話器を置きながら、あいつ勘づいてるわな、と溜め息をつく。
どうも勘のいい女ってのは扱いにくい。
そんな銀時の耳にキシッと小さな音が聞こえ。
振り向くと身を竦ませながら新八が立っていた。
「ぁ、あの…迷惑かけてすみません…」
無言で特等席に座る銀時に新八は狼狽えている。
「…で?」
「ぇ…」
「新ちゃん俺の質問に答えてくれんの?」
脚をデスクに乗せ、銀時は訊ねる。
新八は足元に視線を彷徨わせながら、小さい声ではい、と頷いた。
「何で彼処に居たの?」
「他に行くところが思いつかなくて…」
「何で女装してんの?」
「ぁ…、…」
「じゃあさ、俺の事好きなの?」
新八の顔が紅くなり。
はい、と小さな小さな声で答えた。
銀時の胸にきゅん、と甘く痛みが走る。
「……」
「女装は…銀さんが女じゃないとだめだって云ってたから…」
「云った?俺。」
「あれは云ったようなものじゃないですか…朝…」
「そりゃ、男として見てんだから当たり前だろ。…それを抜きにしても確かに、俺の中じゃ新八は"かーちゃん"じゃねーけど"彼女"でも無いわ。」
そう、母親でも彼女でもない。
銀時は立ち上がり新八に近付く。
泣いてこそいないが今にも泣きそうだ。
無表情に新八を見下ろしながら銀時は耳元に囁いた。
「新八さ…ほんとに好きなの?勘違いじゃねーの?」
「そんな…」
「じゃ、俺とこういうこと出来んの?」
「え…」
戸惑う新八の顔に手を添えて薄く色づいた唇に触れる。
新八の躯がピクリと揺れた。
「…こうやって…此処とか…此処とか…」
「あ、ぎんさ…ァ」
つぅ、と手を滑らせ胸や腰を撫でる。
お下げを揺らしながら新八は震えた。
なおも銀時は追い込む。
「オンナノコみたいに…なっちゃうの?」
「なん…」
「おちんちん…飲み込むの?此処で…」
「ぁッ!」
銀時は耳元に囁きながら新八の尻の割れ目をぐいっと押した。
直接的な銀時の言動に耐えられないのか新八は目をきつく瞑る。
そんな新八を見下ろしながらズキンと胸が痛む銀時は。
好きでこんな事を云って新八を苦しめてる訳じゃない。
大切だから、こんな自分に思いを寄せないように。
普通にアイドル追っかけて普通に女の子を好きでいさせたいから。
銀時の中での新八の立ち位置を変えないようにと。
敢えて酷い言葉を選んだ。
「…銀さん…」
震える声で新八が口を開いた。
「僕…」
「ウン」
「…大丈夫です」
「…ら?」
新八の声には力がこもっていて。
予想外の台詞に銀時は間抜けな声を上げる。
新八は手を握り締め銀時を見上げた。
「勉強、しますからっ…」
「ぁ?」
「僕、銀さんのっ、おち、んちんっ、欲しいで、すよっ!バッチコイです!」
「ちょ…ぁえ?!待て待て待て!」
何故か元気になった新八を宥める。
オイオイオイオイ、完全にヘンな方向へ向かっちまってるんだけど!?
すっげーヤる気出しちゃってんだけど!?
勉強って何のお勉強!?
引かねーの!?アナル使うって今脅したよね!?
混乱する銀時をよそに新八は暴走しだす。
「何から!?何から出来るようになったら良いですかね!?不器用で躯硬いと不便ですか!?あ、じゃあまず柔らかくしなくちゃ、あ、顔射とかって眼鏡有る方が萌えますか!?」
「ちょ、新八カムバァァァァァック!」
肩を掴み、大声を出せばきょとんとした顔の新八。
銀時はうなだれる。
「おま…顔射って…」
「そういうの嫌いですか、銀さん。」
「そうじゃなくてェェ!わかってる新八君?!俺が軌道修正してあげてる理由!?」
「僕が女の子じゃないからですかっ!!嫌いだからですか!?迷惑だからですか!」
「じゃなくて!大事にしてんの!お分かり!?」
むごごと新八が言いよどんだ。
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