Silver Soul

□阿伏兎から労を込めて。
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どぉーも、初めまして。

俺は春雨が第七師団団員、阿伏兎です。

ん?

初めましてじゃないって?

いやいや、

おたく等からしたらそうかもしれないけど、俺からしたら初めましてだ。

まぁ、堅苦しい挨拶はすっ飛ばして。

今日は俺らの団長、神威についてちょっと紹介しよう。

因みに今は地球より小規模なチンケな星で夕飯中さね。

モグモグモグ...

「うーん、此処のご飯は美味しくないな。やっぱり地球のご飯が一番だよ。」

飯食いながら子供みたいなこと云ってるがこれが俺らの団長神威だ。

見た目ひょろっとして顔には常に笑顔を浮かべって、見た感じじゃただの優男なんだが。

その実、かなりの戦闘能力を持ってる。

夜兎の血を従順に受け継いでんだ。

末ってか既に怖ろしい奴さ。

まぁ夜兎の未来には安心出来るけどね、オジサンは。

ただこの好き勝手し放題なすっとこどっこいの世話は大変な訳。

例えば、

「我が儘云わないで食べてくださいって団長、アンタ胃に入ればなんでもいいんでしょ」

こんな事云やあ、

「何云ってんのさ阿伏兎、そんな事云うと」

お前を食べちゃうぞ、だと。

「いやいや、こんなギスギスした兎食べると腹下しちゃうっての。」

苦笑いで返せば

冗談だよ、なんて云いながらケタケタ笑ってやがる。

食べるは冗談にしろ、下手したら鱠にされかねないからねぇ。

勿論俺もタダでやられる気はないがね。

ふりかけサラサラ生活してた癖に、と笑ってやる。

「あ、そうだ、阿伏兎。アレ作ってよ。」

ほぉら、また、すっとこどっこいな事を云い出したよ、この人は。

ってか、オジサンはコックさんじゃあないからね。

部下だよ、部下。

「なぁに云ってんの団長。あんなモンよりこの飯の方が旨いに決まってんだろう。」

ああ、一応云っておくが、

団長が不味い不味い云ってる飯だって今居る星じゃ三ツ星なんだ。

確かにこの刺身は頂けないがな。

一体何の魚なんだか。

それでも食えねぇ程じゃないのよ。

只、団長が地球の飯贔屓なだけなのさ。

味なんて大して味わいもせず丸呑みしてんだ、俺はな。

なのに目の前のすっとこどっこいときたら、箸を投げ出して

「作ってよ、阿ー伏ー兎ー?」

なぁんて笑顔で首を傾げてる。

そんな仕草されてもねぇ。

確かに見た目はいいだろうが、

あんたの中身を知ってる部下としては怖いだけなんだよ。

「食べたいな、アレ。」

「団長、気に入って頂いてんのは嬉しいけどな、」

材料が無いから。

作れっても材料無いのよ、ほんと。

諦めてくれよ。

「うーん、」

だがこの団長、

利かないんだ。

パンパン、

手を鳴らして呼び出した

魚みてーな天人に何かを囁いてる。

いやな予感がするぜ、こりゃ。

「さぁ行こうよ。」

あら?

予想外、団長が立ち上がったよ。

諦めたのか。

って…

そんな訳ないよなぁ、コレに限って。

「どちらへ?お姫様。」

嫌味に云ってやったんだけどね。

「阿伏兎は厨房。俺は先に部屋で待ってようかな。」

かわされちまったよ。

俺が、厨房。

このお姫様は、宿部屋。

な、おかしいだろう?

俺は部下だ、あくまでも。

なのに相変わらずのすっとこどっこいは

「じゃ、待ってるよ阿伏兎」

だとさ。

「勘弁してくれよ団長〜。」

部下の切実な呼び掛けにも意を介さないこの勝手振り。

片手を上げると機嫌良さげに出て行っちまった。

パワハラで訴えるぞ、コノヤロー。

ってな感じで

話しを聞かない、

わがまま勝手な団長な訳だから、

世渡りもへったくそなんだ。

まぁ、

俺は部下だから、

上司の駄目な部分を補うのが仕事だからね。

しょうがないかね。

さて、

それでは部下は団長の飯作りにでも行きますか。

じゃ、一旦停止な。

次の頁ででも会うとしますか。



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