小説

□少年は切なさに涙する
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最近俺と一緒に昼ご飯を食べる百目鬼というやつがいる。最初は凄いけんかをしたのに、何故か今一番近い存在となってしまった。
三白眼で、無表情で、なのに凄く好きになってしまった。
好きなんだって思うと意識して、素直になれず心にもない言葉を言ってしまう。
だから多分百目鬼には嫌われていると思っていた。

「あっ私用事があるから先に行くね。」
ひまわりちゃんが先に教室に帰っていった。

「・・・」
「・・・」
百目鬼と二人っきりになると一気に気まずくなった。

(やっぱ俺嫌われてるんだろうな・・・)
そう思うと悲しくなってきた。

「・・・四月一日どうした?」
百目鬼が聞いてきた。
「何がだよ。」
ブスっとした声になってしまった。
(あぁ可愛くないな・・・)
「あやかしが見えるのか?」
「だから何がって。」
「泣いてる。」
「えっ・・・あっ。」
いつの間にか涙がぽろぽろ落ちていた。

(何で・・・)

すると突然百目鬼に抱きしめられた。

「へ?」
(な・・・何?)
「そんな辛そうな顔見せるな。」
(思わせぶりをすんな)
ばっ、と百目鬼の腕を振り放す。

涙をぬぐいつつ、
「か、かんけーねぇだろ?」
と言う言葉を言ってしまう。
「関係ある。」
「な・・・・・・んでだよ。」
「だって、大切な人のそんな顔見たくない。」
「大・・・切?」
「四月一日・・・好きだ。」
言っている言葉の意味がよく分からなかった。
「・・・は、好きって・・・・!?」
そのまま俺はまた百目鬼に抱きしめられ百目鬼の肩で号泣してしまった。

「泣くなよ。」
「うっうぅぅぅ」
「はぁ・・・・・・」
ため息をつかれたと思った瞬間、

「んっ・・・・!?}
唇を塞がれた。
そのキスはどこまでも優しく、温かかった。

「泣きやんだ。」
百目鬼の指に涙を拭かれ、見つめられた。
「・・・」
「何かあったら俺に言え。」
百目鬼の見つめる眼は優しかった。
「う・・・ん。」

そんな目で見られるのは久しぶりだった。
「・・・・・・・か?」
「あ?」
「俺で・・・・いいのか?」
「何がだ?」

自分に自信が持てなかった。
どう考えても完璧な百目鬼と、こんなあやかしが見えて、引きつけて、自分の正体が分からない自分が釣り合うとは思えなかった。
それでまた涙が出そうになってうつむいた。

「はぁ・・・・」
びくっと躯が震える。
(呆れられた)
「ちゃんと顔見せろ。」
四月一日の顔をぐいっと持ち上げた。
「!?」
「何か勘違いしてるみたいだから言っておく。俺はそんな顔何か見たくない。笑顔見せろ。」
「命令かよ」
ふっと笑って、
「あぁ。命令だ」
と言った。

「うっ・・・・」
「泣くな。」
「そ・・・・んなの・・・無理だ。」
「泣きやむまでキスしてやる。」

「んっんん」
何度も、何度もチャイムがなるまで浅いキスをされた。


それでも泣きやむことはできず、ずっと、ずっと泣いたままだった。

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