小説

□お弁当
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AM4:00.携帯から着メロが流れ出した。


わたしは腕を携帯へ直進させると同時に、
脚を床から垂直方向へ勢い良く伸ばした。

布団は重力に逆らって宙へ舞う。

しかし、わたしが携帯のアラームを止めたと同時に
布団はわたしに向かって襲い掛かってきた。



今朝の効果音は『ドサドサ』に決定☆




窓の外はまだ暗いけど、微妙に明るくなってきてるな〜。

でも、お陽様より早起きに成功だ〜☆




そう思いながら窓を開けたら、
なんだか湿った、冷たい風が部屋の中に潜り込んできた。



う〜んっと〜。


まだ疲れが完全に取れきってはいないかな〜。




えっと、
昨日布団の中に入ったのが10時だったでしょ。

でも興奮し過ぎて、確か2時になっても眠れなかったんだよね〜。


うっわ〜。

改めて考えてみたら、何してんだろうわたしは。



だってだって!



今日は彼氏に会える日なんだもん♪



そしてさらに!


今日はなんと、
彼氏に初めて手作り弁当をプレゼントするのだ!






何故お弁当と作るのかって?


実はこの前、彼氏と話している中で、
彼氏の口からある一言を聞いてしまったんですよ。



「一番の栄養源は学食だけど、
うちの学食、あんまり美味しくないんだよね〜。」


って。



そこでわたしは決めたのだ!



よし、今度彼氏に合うときに、手作り弁当をプレゼントしよう!


って!




もうこの二ヶ月間、彼氏に似合いそうなお弁当を選んだり、

お弁当用レシピを買って、
なんか凄そうなメニューを作ってみたり、

予行練習として、
大学に二人分のお弁当を作って持っていったり・・・。



今日という日を待ちに待っていたのだ!






今日は、彼氏が通っている大学で、
滅茶苦茶マイナーな検定があって、

別にその試験には全く興味が無かったけど、

・・・あっ、いやぃゃ、全くじゃないよ!
えっと、英検が100だとしたら、じゅう・・・
んっと、7〜8くらいは興味あるから!



んで、
その検定を受けるついでに彼氏に会うんだ♪



そ・れ・で!


その検定が午前中に終わるから、
その後に彼氏と合流して、
そこの大学の何処か眺めがいい場所で一緒にお弁当が食べたいな♪


あっ、でも、

彼氏に会う口実としてその検定を受ける、

だなんて知られたくないから、今日受ける三級は受かるくらいに、一応は勉強したんだよっ!



 
 



えっと〜。



シャワーも浴びたから、

そろそろお弁当作りに取り掛かろう!




・・・彼氏にお弁当作る為に、朝4時に起きた〜、

なんて知られたら何だか恥ずかしいな。


「6時に目が覚めちゃって、なんか暇だったからお弁当を作ったんだ〜。」


よし、言い訳決定☆




とりあえず始めにお米を炊こう。


ここでポイント!


洗剤は使ってはならない。


うん、わたしって本当に頭が良い。


常識を知っているほど素晴らしい物なんてないよね〜。





一体、何合
炊飯器の中にお米を入れたか忘れちゃった☆

だけどそんなことなんて
大したこと無いね!



また量りなおせばいいだけの話だ!






今日のお弁当のメインは・・・、

ハンバーグ☆


昨日のうちに、小さいサイズのを作っておいたんだ♪


それと一緒にブロッコリーとニンジンもね。




ニンジンは、星とかお花とかに切ってみようかな。


って思って、お花形の型を買っておいたんだけど、

急に恥ずかしくなっちゃったから、
まるい形のまま炒めちゃった。





今日作る本格的な料理一品目!


アスパラのベーコン巻きだぁ!



失敗を繰り返してベーコンがなくなってしまったら困ると思って、
2パックも買っておいたんだけど、
1パックで十分足りちゃった。


さすがに三回目は上手に作れたわ。





お次に、ご飯の上にかけるタラコを焼くぞ!



フライパンの上で踊るその姿は、
まるでわたしの心の中をあらわしているような・・・。









キャーすっご〜い☆



マジでわたしって、詩のセンスあるかもしんない♪


あぁもう絶対、
テンションの低いわたしが聞いてたら、
深いため息吐かれちゃうわぁ♪




最後の一品、
お弁当の定番、


卵焼きだぁ☆







冷蔵庫から卵を一つ取ってみた。




「グシャ」


「あ」





なんと握力で卵を握りつぶしてしまった。



慌ててお椀にその卵を入れる。





落ち着け自分。



だってだって、
久しぶりに彼氏と会えるんだもん!





いや、落ち着け自分。









気を取り直して、次行くぞ。










よし、卵を握れた!








Q.指先に力が入っている気がするんですが、
これは気のせいですか?



A.気のせいである。







Q.指先から肩まで震えているんですが、
本当に気のせいですか?





A.寒いだけなのである。

この時間帯は、一日で最も寒い時間帯なのである。







Q.そうでしたか。
お騒がせ致しました。



A.良いのである。








よし、卵を割るぞ。




「グシャ」


「・・・・・・。」






卵を割ろうとキッチンの角に当てただけで崩れてしまった。









あぁそうだ、

これはわたしが緊張しているせいではない。



卵がもろかったんだ。




きっと高い卵ってもろい物なんだ。







いつもは1ダース125円の卵を買っているけど、

今回は1ダース250円の卵を買ったんだ。



二倍も高かったんだ。


二倍もろくて何が悪い。





彼氏は卵のドロドロしたのが嫌いだから、

しっかりと焼かないとだな。





でも、

砂糖入れると焦げ目が付くから、

そんなにしっかり焼かなくても、見た目は大丈夫だ。











彼氏の好みを考えてお弁当を作った、


だなんて知られるのが何だか恥ずかしいもん。













よし、これで全品完成だ☆





え?



レシピ買ったのに、ずいぶんシンプルなメニューばかりだ、

だと?






彼氏の為に練習したなんて、

これまた恥ずかしいからだよ!







結局お花の型のごとく、

買ったまま必要ありませんでしたよ!







 
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