小説

□コロッケカレー
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「・・・・・・メールが・・・



 ・・・返って来ないよぉ。」






窓から街灯の光が差し込んでくる。


枕が何だか湿っている。




伸ばした腕の先に有るのは銀色の携帯。

しかし、色彩感覚の無い部屋には白っぽい物体でしかなかった。


その携帯を握り、音を立てずに開けてみる。

画面がとても眩しい。




「・・・・・・。」





顔を枕にうずくまらせ、携帯を閉じ、

そのまま腕をボックスティッシュまで伸ばす。



「〜〜〜・・・。」
 

さっき咬み切ったハズなのに、どうしてまた鼻水が出てくるんだろう?



きっと、今の私の顔は誰よりも不細工なんだろうな〜。

「あはは・・・。」



枕の湿り気がどんどんと広がっていく。





携帯なんか開くんじゃなかった。


何も変わらない画面を見るのが辛くて・・・。


待ち受け画面ですら、もう何ヶ月も変わっていない。



幸せそうな二人が写っていて・・・。
 




だけど、その待ち受けもそのうち変わってしまう気がする。


画面の中の少女とは裏腹に、気の早い私は首が見えるほどのショートカット。

それでも、その少女と同じ笑顔を、
その少女の隣の青年の隣で、

もう一度、

せめてもう一度してみたい。






冷たい風が部屋の中に潜り込んでくる。

顔を枕に埋めたまゝ窓へと腕を伸ばす。


しかし、腕が冷えるだけで、窓へとは届かない。



結局閉めないまゝ、布団の中に突っ込んだ。






「ねぇ・・・。」



忙しいのかな。




・・・私だって、暇なわけじゃないのに・・・。





「ふぇっ・・・。」




またボックスティッシュへと腕を伸ばした。



風が寒い。






 
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