others novel

□絶対来ると思ってた
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『話があるんだ』

そう電話で言われたから一応言われた場所に来てみた。



何だろう。

もしかして彼女の紹介とか?



分かってたよ。

いくら幼馴染でも、私たちは恋人じゃないもの。

分かってたけど、こんなの辛いだけだよ。

でも、私にはいつも勇気がなかった。



ある週刊誌に周助の記事が載ってた。

そこに周助は好きな人がいるって書いてあった。

友達から聞いた話では大学でいつも可愛い女の子と2人で歩いてるらしい。

きっとその子なんだろうな。


周助はモテるもん。

可愛い子がお似合いだよ。

知ってる。

私なんて釣り合わないこと。


中学の時に散々周りに言われたもん。

「幼馴染だかなんだか知らないけど、あんた不二君とは不釣り合いよ」

そんなこと私が一番分かってるよ。

しかも、今では有名なテニスプレイヤーだからね。



でもね…。

昔から好きだったんだ。

気付いたらいつも周助を見てたんだ。

自分だけ周助って呼べるのが特別なかんじで嬉しかった。

それももう終わりなんだね。




呼ばれた場所は昔よく遊んだ公園。

こんなところに彼女を連れてくるのかな?




時間は6時。

子どもたちはみんな公園から出ていく。

私はそんな姿を見ながらブランコに座る。


昔はいつも周助の隣に居るのが当たり前で。

周助の家で裕太君と私と周助でよく遊んでた。

もちろんこの公園でも。


そういえばこの公園で周助に1回だけ聞いたことがあるんだよね。

「好きな人いるの?」って。

そしたら周助は君だよって言ってくれた。

でもそれは幼稚園の時の話。

それだけでも私は嬉しかった。


あの頃のこと、周助は覚えてる?

きっと忘れてるよね。

だってずっと前のことだもん。



上を見上げると夕焼け空がとても綺麗だった。

私にはどこか悲しげに見えてしょうがないのはなぜなのかな?

今の私の心みたい。



「空、綺麗だよね」

「周助…。」



周助は私の隣のブランコに座った。

1人で来たようだ。



「話って何?」

「元気がないって聞いたから」

「誰がそんなこと言ったの?」

「大石。この間偶然会った時元気が無かったって…。」

「そんなこと無いよ。あのときは疲れてただけだよ。バイト終わりだったし。」

「本屋でバイトしてるんだっけ?」

「うん」

「そっか。なら良かった。」

「何?それだけ?」

「ん?まぁ、そんなかんじかな?」

「ハァー」

「何でため息?」

「周助っていつもそう。人のことばっか。」

「そう?」



いつだってそう。

高校生の時だって私に何かあればこうやって私の話を聞いてくれた。

場所はいつも違ってたけど。



「人のことより自分はどうなわけ?」

「僕?」

「今じゃ時の人だもの」

「もしかして、週刊誌のこと?」

「で、どうなの?」

「何が?」

「またまたー、惚けちゃって。居るんでしょ、好きな人?」

「うん…。」



ほらね。

やっぱり本当だった。

思ってたことが当たった。



「もしかして、付き合ってるとか?」

「ううん。まだ…。」

「うそ!?周助ってそういうことすぐに解決しそうなのに…。」

「怖いんだ…。」

「怖い?周助が…?」

「僕だって怖くなることぐらいあるよ」

「何で?周助なら絶対上手くいくよ!」

「どうしてそう思うの?」

「どうしてって…。」



まさかそんなふうに返されるとは予想外で。

私はなんて言ったら良いか分からなかった。



「そ、そりゃー周助モテるし、周助みたいな人に告白とかされりゃ断れないでしょ?」

「ホントにそう思ってる?」

「お、思ってるよ!」

「そっか…。」

「取り敢えず、その子に素直に言ってみることが大事じゃない?」

「………」

「周助?」

「もしさ…。もしだけど…。」

「なに?」

「もし正直に言って関係が壊れちゃったらどうする?」

「それは…。き、きっとそれまでの関係だったんだよ。うん、そうだよ!」

「クスクス」

「何笑ってんの?」

「いや、君に聞いて良かったよ」



心が痛い。

自分の言ったことが自分自身に返ってきていて、自分で自分のことを傷付けている。



「もしかして、本当はそれが聞きたかった?」

「あ、分かった?」

「当たり前でしょ。何年一緒にいると思ってるのよ。」

「そうだよね」

「ま、頑張ってよ。私はいつでも周助を応援してる。良い朗報を待ってるから。」



いつまでもここに居てはダメだ。

これ以上この人の傍には居られない。

きっともう2人では居られないね。

私はそう思ってブランコから立ち上がった。



「じゃあね。私これからバイトだから。」

そう言って彼に背を向けた。

ウソを言った。

今日はバイトなんか無い。

歩き出そうとしたら、急に彼に抱き締められた。



「ちょっ、周助!?」

「好きなんだ」

「ハァ!?」

「好きなんだ…、君のことが…。」

「ちょっと周助、冗談にもほどが…。」

「冗談じゃなくて、ホントに好きなんだ!」

「ウソ…、ウソだよ…。だって…。」

「昔、ここで君に言ったの覚えてる?」

「え?」

「僕は君に好きだって言ったの、覚えてる?」

「!」

「あれから僕の想いは変わらないよ」

「………」

「あの時、君は僕になんて言ってくれたか覚えてる?」

「……、忘れるわけ…、ない…。」

「じゃあ言って?」

「私も…、私も周助のことが大好き!」

「知ってる」

「え?」

「知ってた。でも、言えなかった…。さっきも言ったけど、君との関係が壊れるんじゃないかって思うと言えなかった。」

「周助…。」

「僕も君のことが大好きだよ」



そう言って彼は私にキスをしてくれた。





「ねぇ、どうして僕がここに呼んだと思う?」

「?」

「ここは思い出の場所だし、ここでなら言えると思った。それにね…。」

「それに?」

「ここなら絶対来ると思ってたからだよ」





絶対来ると思ってた





END.

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