桐青★島準

□願い。
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100人を超える野球部員の中で、ベンチに入れるのはほんの一握り。



中学から、ずっと憧れてた。

優しくて、男気があって、みんなから信頼されてて。

和さんにオレのボールを受けて欲しかった。



「準太のシンカー、キレてていいな。いい決め球になる。試合でつかっていこう。」



「シンカー…すか。」



オレは正直、シンカーつかうのはあんまり好きじゃない。


言葉を濁したオレに、和さんがクスッと笑う。



「大丈夫だ。お前のシンカー打てるやつはそんなにいないから。」



オレを信じてなげりゃいい。


和さんはそういって笑った。









エースになって、初めての試合。
あがってコントロールの乱れたオレを、和さんが上手くリードして落ち着かせてくれる。

試合は七回に、慎吾さんの出塁から逆転。1点リードで九回を迎えた。


先頭バッターをうちとったものの、後続を出してしまって、九回裏、ツーアウト満塁。


ツーストライクまでおいこんで、和さんのサインは…シンカー。



シンカー…大丈夫なのか?



でも。

和さんがいいって言ってくれたんだ。
信じる。
信じて思いきり、投げる。



力いっぱい放ったボールは、和さんの構えたミットに吸い込まれて、審判の腕が高く上がる。






ゲーム・セット。






「やったな準太。エースとして十分な内容だったぞ。」


クシャッとオレの頭を撫でて、豪快な笑顔でオレに声をかける和さん。

決していいとは言えない内容の試合だったのに、褒めて自信を持たせてくれる。



「和さん…オレ、頑張ります!和さん信じて、ついていきますから!」



「はは、期待してるからな。」



いつまでも一緒に、野球をしていたい。

ずっと和さんと、バッテリーを組んでいたい。

一緒に甲子園の土を踏みたい。




心のそこから、そう願った…。






Fin.


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