桐青★島準
□だって本気の恋だからA
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慎吾さんとのお付き合い、お試し期間二日目。
[だって本気の恋だからA]
1限が終わって携帯を開くと、慎吾さんからメールがきてた。
“昼休み、
一緒に飯食わねえ?”
顔がボッと熱くなるのがわかる。
や、はたからみたら先輩が後輩に飯一緒に食おうって言ってるだけの話なんだけど。
慎吾さんがオレを“好き”な気持ちを知ってしまったら…やっぱりそれなりに意識するわけで。
一緒に飯食うのなんて、練習や試合の時なんてフツーなのに。
……どうしよう。
迷ってはみるものの、断る理由も見つからない。理由もなく断ることも…なんかできないし。
“わかりました。
どこで食いますか?”
簡潔に文章をつくって送信すると、待つことなく返事がきた。
“邪魔されたくないから
屋上で!
(´ε`*)チュー”
……う゛!!!!
そうくるかよ!
…昼休みまで、そのあとの授業は、手につかなかった。
授業に集中出来ないまま昼休みになった。いつものメンバーに先輩んとこ行くからと断りをいれて、弁当持って教室をでたとこで、バッタリ利央とであった。
「準さーん!これ昨日言ってたビデオ!持ってきたっス」
「お、サンキュー♪」
「ついでだから昼メシ一緒しようと思って持ってきました!」
「…うぇ…っ。」
「ダメっすか?」
「先約があんだよ。」
「誰すか?」
「…慎吾さん。」
「慎吾さんならオレが一緒でもいーでしょ♪行きましょ準さん!」
「え!ちょ…利央!?」
人の話も聞かないで、利央は行ってしまう。
“邪魔されたくないから”
慎吾さんからのメールの一言が頭をよぎる。
慎吾さん…気分悪くするよな。
重い気分で、先に行ってしまった利央の後を追いかけた。
…ゴメンなさい、慎吾さん。
「ちわす!」
「ゲ…なんでお前がいんだよ!」
「ゲってなんすか!ゲって!」
ブーブー言ってる利央の後ろでゴメンの意味を込めて手をあげて目配せをすると仕方ないなという顔で慎吾さんが笑う。
「…ま、いっか。食おうぜ。」
三人で輪になって弁当を囲む。
普段はなんだかんだとたわいもない話で盛り上がるんだけど、変に意識してしまって上手く言葉がでてこない。
慎吾さんは今日はパン。
食べながらメールうってる。
利央が一人で楽しそうに喋ってるのを中途半端に聞きながら相槌をうつ。
「でー、昨日迅がー…」
〜♪♪♪♪♪♪
利央の携帯の着信音が、屋上に鳴り響く。ポケットから携帯を取り出した利央の顔が歪む。
「どうした?利央。」
「ヤマサンと本山さんが用事があるからメシ食ったら3-4来いってー!せっかくの昼休みなのにー!」
残りの昼メシをかきこんで、ブツブツ言いながら利央は早々に屋上を立ち去った。
利央のいなくなった屋上で慎吾さんと二人、顔を見合わせる。
「準太…まさかとは思うけど、オレと二人が嫌で利央…。」
「ち…違いますよ!利央オレとメシ食うつもりでうちの教室まで来てたんス。慎吾さんとメシ食うっつったらオレも行くって…!」
なんか言い訳してるみたいだ。なんも悪いことしてねえのに。
「ならいいけどさ。な、準太、タマゴヤキいっこちょうだい。」
「あ、いいスよ。どーぞ。」
弁当箱を差し出したオレに、慎吾さんがにっこり笑いかけて言った。
「食わせてよ、準太。」
「…っ!」
食わせるって…俗に言う“アーン”だよな?
そんなんできるわけねーよ!
「やです!」
「誰も見てねえし。お試し期間でもオレら今恋人同士だろ?」
ほら早く、と言って急かす慎吾さんは凄く楽しそう。仕方なくオレは、箸でタマゴヤキをつまむ。
「もう…ほら、口開けてくださいよ。」
「お約束の台詞は?」
……うっ。
あぁ、もー…!
「………アーン。」
「あーん♪」
オレの恥ずかしさなんてそっちのけで、慎吾さんは楽しそうに笑った。
…ま、いっか。
「ヤマサン、利央に何の用だったんすかねー?」
「ああ、あれな。…ホレ。」
慎吾さんは自分の携帯を引っ張り出すとパカッと開き、オレに差し出した。
“ヤマチャン悪い。
本命昼メシに誘ったんだけど
利央がついてきちまって。
悪いけどそっちで
あずかってくんねえ?
今度おごるから”
「…慎吾さん、これって…」
「ヤマチャンに借り1、だな」
この人らしいというか何と言うか。
呆気にとられるオレの横で、悪びれもせず慎吾さんは、ペロッと舌を出して笑ってみせた。
Bへ続く。