桐青★島準

□だって本気の恋だからC
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慎吾さんにキスされた。
慎吾さんの指先は少し震えてて、あらためて想いの真剣さに気付いた。
オレは…どうしたいんだろう。


慎吾さんとのお付き合い、お試し期間四日目。



だって本気の恋だからC




思い出してなかなか寝れなかった。それなのに自然と目が覚めてしまった。
目覚ましを手にとり見ると、まだ1時間は寝れる。


なのに、寝れなかった。


慎吾さんにキスされたことが頭の中を占領してる。
メシ食ってても風呂入ってても、慎吾さんの事ばっかり。

だけどこれが慎吾さんを好きな気持ちなのか、そうじゃないのか分からない。


お試し期間がおわって、オレがやっぱり付き合えないって言ったら、慎吾さんはどんな顔するだろう。

元通りただの先輩後輩にもどれんのかな。
それとも気まずくなって部活以外で話すことがなくなったりすんのかな…。


…慎吾さん…。


布団に潜って目を閉じてみても、浮かんでくるのは慎吾さんのことだけ。


オレは二度寝を諦めて、いつもより早くグラウンドへ向かうべく、パジャマのボタンに手をかけた。




朝のグラウンドにはまだ誰もいなくて、早く来たけど部室の鍵も開いていない。脇のベンチに腰掛けると、広いグラウンドを見渡す。

オレが登るマウンド。その左後方を守る慎吾さん。
守備もバッティングも上手くて、身体能力も高い。
何度も何度もそのファインプレーに助けられた。


「はぁ…。」
「なんだなんだ、朝からため息なんかついて。」


いきなり後ろからかけられた声に驚き、飛び上がると、そこには鍵を持った和さんが笑って立っていた。


「あ…和さん。おはようございます。」
「おはよう。今日は早いな?」
「なんか目ぇ覚めちゃって。」
「ていうかお前あんまり寝てないだろ。目の下、酷いクマだぞ。」
「え…マジすか?」


和さんは大丈夫かと心配した後、体調管理はしっかりな?と真面目な顔で言った。


そうだよ。試合もひかえてるし、しっかりしないと。

一人二人と部員が揃い始める中、慎吾さんはまだ来ない。って言っても慎吾さんいつもギリギリだけど。


「はよーす」


遅刻かな?そう思ってたとこに慎吾さんはギリギリで滑り込んできた。大きな欠伸をしながら。


「慎吾、たるんでるぞ。しゃきっとしろよ。」
「悪い悪い」


和さんに注意されながら悪びれもせず慎吾さんは荷物片手に、俺を見つけると目を細めて笑う。


「おはよ、準太。」
「お、はようございます。」
「寝れなかったのか?美人が台なしだな。」
「…誰のせいだと思ってんすか。」


慎吾さんはハハハと笑うとオレの耳元で、昼休み屋上で、って、小さな声で囁いた。









3限目の休み時間、マナーモードにしていた携帯がブルブルと震えた。
メールの発信者は…慎吾さん。


『悪い。昼休み、ヤボ用できちまった。すまないけど他の誰かとメシ食ってくれるか。』


……。


『わかりました。』


短い返事の文章を作り送信する。
昨日の今日で二人きりは少し気まずかったから、慎吾さんには悪いけど、ちょっとだけホッとした気持ちになる。

メシ食ったら少し昼寝しよう。

寝不足でちょっとけだるいし、6限目は体育だし。このままじゃ部活まで体力がもたない。

それでも頭の片隅に、慎吾さんのことが引っ掛かったまんまだった。





午後の授業はあっと言う間に過ぎた。

体育の授業だったからそのままジャージで部室に行き練習着に袖を通す。慎吾さんはまだ来ていなくて、ちょっとだけホッとする。

その時だった。


「準さん!昼休み、慎吾さん、女の子と抱き合ってたんすよ!きっとこないだ言ってた本命の彼女スよね!」



…は?
今何て言った?



「利央、それ、どこで?」
「特別教棟の階段あたり!うちのクラスからまる見えだったんスよ!」


楽しそうに話す利央とはうらはらに、気持ちにモヤがかかっていくオレ。

女の子に呼び出されたとかならわかるけど、抱きしめてたって、なんだよ?
慎吾さんオレのこと好きっていったよな!?
どういうことだよ!?


「…準さん?どしたの?お腹でも痛い?」
「あ…何でもない。」
「ならいいけど。準さんすぐ我慢すんだから無理しないで下さいよ。」


一人前にえらそうなことを言う利央に、何でもないふりしてみせるけど、モヤのかかった心は晴れなくて。
今日の部活は…練習にならなかった。






続く。


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