桐青★島準
□だってお仕置きなんだから
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準太は利央を可愛がっている。
利央は準太のことを慕っている。
中学のときから利央は準太にべったりで、高校にあがってからもそれは健在。
毎日大型犬みたいに準太にじゃれついている。
スキンシップも多くて、準太に纏わり付く姿はまるでゴールデンレトリバー。
そんな無邪気に懐く利央を、準太は可愛がってる。
慎吾はそれが気に入らなかった。
慎吾だって、利央が可愛くないわけじゃない。多少生意気なことは言っても、先輩として尊敬されていることは十分わかっているし、選手としてだって伸び盛りの有望な人材だ。
ただ。
準太に必要以上に懐いていることが、そして必要以上に準太に可愛がられていることが気に入らなかった。
「準さ〜ん、疲れたよ〜!」
部活を終えて、着替え真っ只中の準太に後ろから抱きつき、泣き言を言う利央。
「オレも疲れたよー。さっさと帰ってメシ食って寝てぇ。」
「準さん帰り、ビデオ屋寄って帰ろーよ。」
「今日は用事があっから無理。」
「じゃー明日!」
「わかったわかった、明日付き合ってやるよ。」
「やった♪約束だよ準さん!」
準太は笑って軽く利央の頭を叩いた。
誰も気付かないところで、慎吾の眉間にシワがよる。
その可愛い笑顔が、自分以外の誰かに向けられるのも気に入らないのだ。
普段はそこまで顔に出さないし、過剰に妬いたりしない慎吾。
ただなぜか今日、彼は虫の居所が悪かった。
さっさと着替えを済ますとバッグに荷物をつっこみ、少し乱暴にロッカーを閉めた。
「じゃーな、お先。」
「え!?慎吾さん!?」
誰よりも早く部室を出ていく慎吾の後を追おうと、慌ただしく準太が着替えを済ます。
普段ならきちんとたたんでバッグにしまう練習着も丸めてつっこんでしまう。
「お先っす!お疲れ様っす!」
バタバタと出ていく準太を見送りながら、二人の関係を知っている本山がぽそっと圭輔に漏らす。
「…慎吾怒ってたな。」
「きっとこのあとオシオキだよね〜☆」
ノーテンキに言う圭輔は何だか楽しそうで、二人が出て行った扉を見つめて本山は同情の意をこめて呟いた。
「…可哀相に準太。」
「慎吾さん!待って下さいよ!」
慎吾は足を止めない。振り返ることもしない。
スタスタと早足で歩くその後を、準太は慌てて追い掛けた。
「慎吾さん!」
一向に話を聞こうともしない慎吾に焦れた準太が、慎吾の肩を掴んで大きな声をだす。
「…なんだよ」
「何だよじゃないっす。何怒ってんですか!」
「んなことも分かねえの?」
怒気を含んだ声音に、準太がびくっと体をすくめる。それをみて慎吾はちいさなため息をついた。
「準太お前さ…オレとお前は付き合ってんだよな?」
「はい」
「お前に利央がべったりくっついてんの見て、オレが不快になるとか考えねーの?」
「あ…」
「逆にオレが他の奴とべったりしててもお前何とも思わねえの?」
「………ゴメン、なさい」
しゅんとしてしまった準太に、罪悪感を感じてしまう。
べったりくっついているのは利央のほうであり、準太のほうからくっついているわけではない。ましてや普段の自分なら、あのくらいで気にすることはないのだ。