桐青★島準

□だって純情なんだから
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「準太」



さりげなく肩を引き寄せられて、慎吾さんの顔が近づく。

………キス、される。

オレと慎吾さんはついこの間から恋人同士で…普通ならここで、そっと目を閉じるのだと思うんだけど。



「や、慎吾さん…ちょっ…!」

「準太?」



思わず腕を伸ばし慎吾さんの胸を押し返してしまう。

実はこれが初めてじゃない。

何度となく同じことをしてしまってる。


恋愛偏差値というか恋愛経験値というか、オレからみれば慎吾さんは何をしても手慣れているように見えた。

比べて自分は、それなりに恋はしてきても野球ばかりやってきたから、恋愛経験なんて無いに等しい。




慎吾さんと付き合い始めて、初めて『触れるだけじゃないキス』を経験した。

正直、巧みな舌づかいに翻弄されて体が震えた。

足も途中から膝の力が抜けちゃって、唇を解放された頃には力も入らなくって、慎吾さんにぐったりと体を預けたのを覚えてる。

キスだけで腰にきたオレに、んな気持ちよかった?オレってテクニシャン?なんて笑いながら言ってたけど…。


ほんと頭とかボーっとなっちゃって。
唇の感触とかリアルに伝わってきて。
触れてた部分が熱をもってるみたいで。



…なかなか、慣れない。



恥ずかしいと言うか、なんか怖いというか。
ついこうやって、条件反射みたいに拒んでしまう。



「悪り。準太、やだった?」

「や、あの…。」



申し訳なさそうな顔で慎吾さんがオレを覗きこんでいた。
くしゃくしゃとオレの髪を撫でて自嘲気味に笑う。



「オレ、そのうち準太に嫌われそうだなぁ。」

「そんな…!嫌とかじゃないんです……ただ…!」

「ただ?」



思ってることは、言葉にしないと伝わらない。
行動に移さないと何も変わらない。



―――ちゅ。


「準…太?」



慎吾さんの唇に、初めて自分から唇を重ねる。

驚いた慎吾さんの顔。
目が大きく見開かれる。
頬が赤く染まった慎吾さんを見るのはちょっと珍しいかもしれない。



「オレ…あんまりこういうことに免疫なくって…。」



言うのも恥ずかしくて、しりすぼみに声が小さくなってしまった。ちらりと上目づかいに慎吾さんを見ると、慎吾さんは優しく微笑んだ。


「わかってるよ。大丈夫。」


ゆっくりでいいって、オレのペースでいいからって、オレに足並みを合わせてくれる。

そんな慎吾さんを、一日一日スキになることを自覚する。

恋をしてることを実感してる。

恋するとこんな気持ちになるなんて、慎吾さんと付き合い始めるまで知らなかった。










「あぁ、でも準太。」

「?」

「免疫ないなら少しずつつけてかなきゃなぁ?」

「え……ンっ!」



不意打ちみたいに唇を塞がれて、急だったからよける隙もなくて。

オレの唇をぺろりと舐めて、慎吾さんの唇が離れてく。



「スキあり♪」

「も、もう!慎吾さん!」



きっとオレ今真っ赤になってる。そんなオレを見て、慎吾さんはちょっとだけいやらしく笑いながら言った。




「ちゃんと免疫はオレがつけてやっから。手取り足取り♪」



更にまた、顔が赤くなった気がした。

免疫がつくまでに、オレの心臓は破裂しちゃうかも…しれない。






Fin.


 

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